Cateblo.jp

たぶんサッカーの話が多いです。

日本クラブユース選手権 準決勝 横浜F・マリノス×ベガルタ仙台(15.07.30)

f:id:concatenazioni:20150731165140j:plain三ツ沢球での準決勝。やはりコンパクトなサッカー専用スタジアムは見やすい。屋根がないのは難点だが、この日は天気が持ってくれたので問題なし。また直射日光とは関係なく、夏場の15時キックオフは普通に暑かった。

 

横浜F・マリノス 2-0 ベガルタ仙台

横浜FMは[4-4-1-1]。最後尾はGK16上田朝都。4バックはDF26平澤拓巳、DF19坂本寛之、DF22有馬弦希、DF24常本佳吾。中盤は左からMF7遠藤渓太、MF6佐多秀哉、MF5小松駿太、MF12阿部隼人が並び、トップ下にはFW9渡辺力樹。ワントップはFW11中杉雄貴。エースFW10和田昌士は負傷から復帰もベンチスタート。2年生が7人と半数以上を占める。中学時代に唯一「マリノス」ではなかったMF5小松(横河武蔵野JY出身)がキャプテンマークというのはおもしろい。

仙台は準々決勝から大きく布陣を変更して[4-2-3-1]。GK16田中勘太、最終ラインは左からDF3郷家章人、DF23上田健斗、DF2小島雅也、DF30平澤健介。ボランチは前の試合と同じMF4織田遥真とMF8縄靖也のコンビ。トップ下にはMF10佐々木匠が出場停止から復帰し、左にMF25村越健太、右にMF20佐々木翼。最前線はFW9吉田伊吹で、準々決勝で1ゴール1アシストのFW18本吉佑多は控えからのスタート。2年生は3人。

試合の入りはわずかに横浜FM優勢。そして何より異様なスローペース。お互いに布陣を大きく動かさず、飛び道具を中心に攻撃する形が目立つ。とはいえ横浜FMは深追いしない守備を見せる反面、仙台は前からプレスに行く場所をハーフラインから5メートル敵陣側あたりに決めて省力ながらもしっかり走る。前から走る際にはMF10佐々木匠がプレスの基準点となっており、攻撃だけでなく守備でも中心となっていることが見受けられる。前半の飲水タイムまでの決定機は横浜FMに2回。いずれも仙台GKとDFの連係ミスを突く決定的な形だったが、得点には至らなかった。

飲水タイムを越えてもローテンションな流れは変わらず。横浜FMはスタートポジションから大きく動かない選手同士でサイドを意識しつつパス交換をするも攻め手なし。仙台もロングボールを中心に「一発」を狙うが、そのままゴールラインまで流れるケースがほとんどだった。決定機は前半終了間際の44分に横浜FM。3列目の選手が攻撃参加したところにMF6佐多がスイッチ風に絡んで、最後は右斜めからMF12阿部の左足。ファーの絶妙なコースに飛んだが、仙台GK16田中が右手一本でかき出した。前半は0-0。群馬での疲れがそのまま出てしまったような「何も起こさない」45分間だった。

仙台は後半開始時にMF25村越に代わってFW18本吉佑多を投入。佐々木をサイドに押し出す[4-4-2]に変更した。これで戦法はシンプルになる。横浜FMのゆったり伺うような攻撃を全員で守り抜き、突破力のあるFW18本吉を走らせる狙いだろう。どんな方法でも瞬間的に押し込むことができれば、セットプレーで得点を狙う機会も出てくる。一方でセットプレーになれば布陣が崩れて試合全体に動きが出るため、動きの少ない攻撃に弱さを露呈することにもつながる。

仙台は57分にMF20佐々木翼→FW木本晃次郎を投入。そして60分、MF10佐々木匠のCKからDF23上田のシュートで攻撃を完結させた直後に均衡が破れる。崩れた布陣で空いたサイドを突破したMF7遠藤のシュートは仙台GKの正面を突くが、顔の高さのボールをGK16田中勘太がキャッチミス。ゴール前に落ちたボールに目ざとく飛び込んだFW9渡辺がノーガードのネットにたたき込んだ。流れのなかった横浜FMにとっては願ってもない形での先制点。仙台にとってはポジティブな兆候があった矢先の不運な失点となった。

そして横浜FMは殊勲のFW9渡辺に代わってエースFW10和田を投入。一気に畳みかけに行く。これを契機にFW10和田の柔らかいタッチと鋭いターンで基点を作り、左サイドのMF7遠藤との絡みで攻め込むという場面がいくらか出てくる。仙台は66分にMF4織田に代わってMF7錦織司を入れる。MF7錦織はサイドに入って、MF10佐々木匠がボランチ。重心を前に置いて、後ろはリーダーにすべてを託す狙いだろう。その後の飲水タイムでは仙台は濡れタオルを使用。この辺のレギュレーションは柔軟に運用されているらしい。

81分、仙台がDF30平澤→FW19志村弘樹、MF8縄→FW17齋藤耀之介と一気に2人を変え、スクランブル的な3バックで攻勢に出る。そして約1分後、再び試合が動く。横浜FMのMF7遠藤がサイドを突破中に相手との競り合いで倒されるも、地面に腰を着いたまま苦し紛れの左足クロス。中央に飛び込んでいたMF12阿部が腰回転で弱いながらもコースを定めたシュートを放ち、これが右隅に決まった。いずれもミートしたシュートではなかったが、混戦の中でリズムの違うボールが飛んできたため仙台守備陣は対応できなかったようだ。これで2点差。もともと動きの多い試合ではないため、ゴール前に進入する機会が少なかった仙台はかなり苦しくなった。

試合を締めにかかる横浜FMはMF12阿部→MF8西浦英伸、MF5小松→MF25川原田湧を投入。ロングボールを中心に攻めてくる仙台のセカンドボールを拾うべく、フレッシュな選手に任せる。仙台はFW18本吉の単独突破で近い位置でのFKを獲得するも、焦りからミスが頻発して決定機は作れず。試合はそのまま終了。横浜FMが「聖地」での優勝決定戦に進出する権利を得た。

全体的に低い熱量の試合となったが、群馬での連戦によって限られた体力と気力の中で、選手たちは懸命に闘っていたと思う。

伝統のある横浜FMとは対照的に、新興クラブの仙台にとって三ツ沢での経験は大きな一歩。全国の舞台で大きな爪痕は残した。同じ地方クラブを応援する者として、この大会で積み重ねた勝利によって得た大きな自信をこの先の歴史でも存分に生かしていってほしいと心から思う。

f:id:concatenazioni:20150731165559j:plain