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たぶんサッカーの話が多いです。

日本クラブユース選手権U-18 準々決勝 大宮アルディージャ×コンサドーレ札幌(15.07.28)

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2試合目。雨は完全に上がった。照り付ける日光とピッチからわき出てくる湿気で不快指数100%。スタンドは日陰でよかった。

大宮アルディージャ 4-0 コンサドーレ札幌

大宮は[4-1-4-1]。最後尾は188センチ長身のGK1加藤有輝。最終ラインには左からDF3朝妻佑斗、DF19野崎玲央、DF16北西真之、DF2古谷優気が並び、アンカーはMF4山田陸。シャドーにはMF14長谷川元希、MF10黒川淳史を揃え、ウイングは左に右利きFW8藤沼拓夢、右に左利きのMF7松崎快。センターフォワードはFW11川田拳登。2年生が3人、先発全員がジュニアユースからの地産品。

札幌は[4-4-2]。ゴールを守るのはGK16三森哲太。後ろの4枚は左からDF3川尻龍司、DF14濱大耀、DF4前田海、DF5按田頼。MF22河野隼平とMF6杉山雄太のボランチに、サイドハーフは左のMF10高嶺朋樹、右のMF24藤村怜。2トップは“マッツォ”を彷彿とさせるFW11徳田勘太と正統派のFW18菅大輝。1年生が1人と2年生が2人。オーソドックスなスタイルによって各選手の個性を光らせる。

 

入りはゆったりとした展開。のらりくらりとポゼッションしながらミスの出る大宮に札幌が付け込むシーンが目立つ。序盤の中心となっていたのは右SBのDF5按田。4分の単騎突破からシュートまで至った場面を筆頭に、大柄な体躯を生かして「スペースがあれば全部やります」という姿勢で守備から攻撃までマルチな役割をこなしていた。

それにしても札幌はいつ見ても変わらない。パスミスを拾ったボランチサイドハーフに預け、2トップが角度のある場所で受けに来る。サイドハーフがさらに角度を付けるため中に絞ると、ボランチサイドバックが内から外からフォローに入り、スルーパスやクロスの出しどころを伺う。これぞ、札幌ユース。選手が毎年移り変わる高校サッカーで、どの年を見ても同じようなサッカーができるのは、明確な信念のもとに鍛えられている証拠だ。分かりやすく振り切った急進派的な発想が「哲学」として重んじられる風潮もあるが、やるべきことをしっかりやる姿勢を持ち続けられる札幌ユースの文化はもっと評価されるべき。

15分の飲水タイム明けも変わらず札幌ペース。機動力の高いFW11徳田のボール奪取からの突破や、左足で独特なリズムを持つMF10高嶺のゲームメイクからいくつかチャンスを作った。もっともこのあたりから暑さにやられ始めたのか、生命線であるサイドのボールキープでミスが出始める。

2回目の飲水明けの33分、試合が動く。大宮アタッカーの突破をDF5按田がファウルで阻止。相手のミス気味に流れたボールを狩りに行った際に遅れて足を振り、左サイド深い位置で大宮にフリーキックが与えられた。そして34分、MF14長谷川が蹴った鋭いボールに跳んだDF16北西がドンピシャヘッド。ボールを支配しながらも劣勢だった大宮が先制した。ボールもヘッドも素晴らしかったが、ゴール前の危険なエリアでの競り負けに札幌としては苦しい失点。

先制点で勢いづいたのか、大宮はミスの頻発していた中盤同士での無駄なパス交換が減り、サイドのスペースに割り切ってボールを送る、すっきりしたポゼッションスタイルに変貌。最終ラインでのパス交換を続けて相手の活力を奪いつつ、中盤では斜めに角度を付けたパスコースを選択し、札幌の守備網に引っ掛かっても奪い直せる形が増えた。
そんな38分、大宮に追加点が入る。高い位置でのボール奪取を起点に左サイドに流れた11川田のカットインシュートが札幌GKに阻まれると、逆サイドから飛び込んだMF7松崎がボールを拾い、スライドしてきた守備陣をかわして左足シュート。これが見事にニアサイドに刺さった。個の能力で上回りつつ、サイドに広く取った布陣が生きた形で、大宮にとっては理想とする形だろう。また直後の40分にもDF3朝妻の30メートル級スピンシュートが決まり、大宮は3点リードで前半を折り返した。

札幌は掴みかけた流れをセットプレーで手放してしまい、暑さも相まってがくっと落ちてしまったような印象。

ハーフタイムは大宮は全員が涼しい控室に戻り、札幌は控え選手がピッチでウオーミングアップ。わざわざ外に出なくてもいいような気はするが、暑熱順化のような狙いがあったんだろうか。後半開始から札幌MF24藤村に代わってMF29佐藤大樹が出てきた。いずれも1年生。

後半は完全に大宮ペース。攻め気というよりもボールを動かすことに意識を集中させ、動きにシステム感のなかった前半に比べて「受ける」から「出す」の流れがスムーズになった。得意のU字ポゼッションには札幌2トップもほとんど追う気なし。動けば疲れるし動かなければ変わらない、というリードしたポゼッション集団の理想的な展開。札幌は68分のMF6杉山のロングボールからオーバーラップしたDF5按田のヘッドなど、決まりそうなシーンがなかったわけでもないがあくまでも単発止まり。中心選手から順に気持ちも切れるという少し残念な形になってしまった。

そして72分、大宮のFW11川田、MF7松崎のコンビが再び炸裂。中盤で拾った川田がドリブルを始めると、左の外から松崎がフリーラン。受けた松崎は中に進路を取り、ダイアゴナルランで外に抜け出た川田に預ける。川田はサイドに向かって相手DFを抜き去り、中央に飛び込んだ松崎にラストパス。これを落ち着いて決めた。

松崎は2得点でマン・オブ・ザ・マッチ級の働き。ランニングは直線的で力強さがあるが、ボールタッチは柔軟で懐が広くて深い。主にフィジカル面で気になる選手だったが、札幌の守備ラインの間に入っていくタイミングも良かったので、他のプレーの引き出しも見てみたい。

大宮は69分にMF10黒川を休ませ、MF6高柳拓弥を投入。4点目の後にはMF14長谷川→DF12立石爽志、FW8藤沼→FW24奥抜侃志、FW11川田→MF15鈴木大貴、MF7松崎→DF27小林朋史で消耗を避ける余裕も見せた。札幌はFW11徳田→FW仁科佑太、MF22河野→FW19下田友也、DF3川尻→DF12石田佑成の用兵で意地の1点を狙ったが、集中が切れている選手が多く攻撃は形にならず。試合は4-0のまま終わった。

 

全体的に大宮のタレント性が目立った試合。優勝候補の評判は伊達じゃない。攻撃のタレントは言うまでもなくトップレベル。最終ラインも派手さはないが要所で強度を保つことができ、後ろには世代別代表級の番人が控えているから失点も少ないだろう。

札幌は夏の大会でここまで来ただけでも上出来。強烈なタレントはいないが、年代バランスも良いので今後も安定して成長していける。FW11徳田やDF5按田だけでなく、MF6杉山あたりがもっと自立した個性を出せるようになるかがカギ。もっと突き抜けて中心になれる能力と経験はあるだろう。

群馬での試合はひとまず終了、舞台は三ツ沢に移る。1日しか来ていない自分が言うのも変な話だが、群馬は暑さというより直射日光が厳しかった。暑さという特殊攻撃もいやらしいが、太陽は直接攻撃だから分かりやすく効いてくる。熱帯夜であっても日光がなければ疲れも減るはずなので、もうナイターにするしかない。

 

いずれにしても、今年も本当におつかれさまでした。(まだ夏は終わっていませんが)