【J2第9節 湘南×大分】2代目Jリーグ女子マネージャー天覧試合【見出し詐欺】
神奈川県平塚市のShonanBMWスタジアム平塚に行ってきました。
仕事を終えた瞬間から翌日の飛行機まで8時間という強行日程。「もうどうにでもなれ」と地元紙を読みながら、機内でワインを頼んでしまったため、モノレールや東海道線の車内で快適な睡眠が取れました。
自宅に帰る時間がなかったのでスーツの上からユニフォームを着て、住所不定無職になるのを前に節約するためゲストハウス泊という余裕ゼロな感じですが、いまのうちにアウェイに行っておこうという狙いです。
湘南ベルマーレという模範
大分トリニータにとっては、近年でもっとも因縁深いチームと言えるでしょうか。
ゼロ年代こそ異なるカテゴリで対戦していましたが、2012年の昇格、13年の降格を共に過ごした湘南ベルマーレ。翌14年のリーグ最終戦で対戦し、大分は圧倒的な昇格を決めていた湘南に惜しくも敗れ、プレーオフ進出を逃しています。そこから袂を分かつ形となり、15年の湘南はJ1で8位フィニッシュ。昨年まで2年連続で対戦がありませんでした。
今季は湘南がJ1から降格、大分がJ3から昇格し、久しぶりに相まみえることになりました。前回の対戦で脅威だった遠藤航、永木亮太、丸山祐市はみんな日本代表になり、亀川諒史、菊池大介、ウェリントン、大竹洋平らとともに他クラブへと流出。それでもチョウ・キジェ監督のもと、若手を中心に闘える集団を組み上げ、安定した成績を残せるチームになっています。
言ってしまえば、現在の大分トリニータが目指している循環を先取りしている形です。上には上がいるJ1下位~J2が主戦場(いや、J3に落ちといてなんですけどね)になっている以上、選手の流出はどうしたって避けられません。そんな中でクラブが受け継ぐべきプレーモデルを打ち立て、誰が加入しても崩れない柱を持っているライバルのことは見習わねばなりません。
打たれ強いメンタルを作る
そんな感じで試合前は弱気になっていたので、「負けても来てよかったと思えることを何かしよう」という思いでいっぱいでした。そんな時は観光地に行くか、何かおいしいものを食べるのが手っ取り早いです。
ただし、湘南で思い付く観光地がありません。鎌倉や江ノ島に行けばカップルばかりでしょうし、海鮮類はあまり好きではありませんし、サーフィンをするようなバイタリティもありません。そんな状態で海を見に行けば後ろ向きになること必至ですし、すでに茅ケ崎駅通過時の発射メロディが『希望の轍』だったことに「うっ……」と軽く衝撃を受けたところでした。(なんとなくサザンオールスターズを押し付けられるのが苦手)
というわけで、食に頼ることにしました。それも、このあたりでしか食べられなさそうなもので、なおかつ健康に悪そうなものであれば悪そうであるほど良い(自己矛盾)という心持ちです。しかし。
そうなんです、駅前商店街の周辺にはチェーン店ばかり。歩行者天国で骨董市をしていてそれなりに楽しそうだったのですが、いまの気分では変な細長いお面とか買って、「ロングフェース!」(高木駿)とふざけるくらいしかできず、結局ゲストハウスに泊まってまで節約する意味がなくなってしまいます。だから歩きました。
そうして辿り着いたのがここでした。「田舎を歩くならロードサイドの角物件!」と心の中で繰り返しながら、スタジアムのほうに歩いて行ったところで出会いました。
- ジャンル:カフェ
- 住所: 平塚市追分8-2
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- (写真提供:白川さん)
店の前には「ローストビーフ丼」と書かれた看板があり、パンケーキのメニューが記されています。サラダを付けたとしても野菜→肉&糖質→糖質on糖質のような形になり、いまの気分にぴったりなお店です。あまり繁盛した様子もありませんでしたが、地元ではまず行かないおしゃれ感も悪くありません。
というわけで、ここが大当たりでした。
複雑な味のするドレッシングに始まり、肉厚で新鮮な血液の味がするローストビーフが続き、もちもち感たっぷりのパンケーキで締め。ついでにミルクも頼んだので乳脂肪分も大量に摂取できて、心地よい胸焼けを味わうことができました。これでゆとり世代の脆弱な精神が強靭な中性脂肪で包まれたことでしょう。
(※食レポが下手なのは自覚しているんですが普通にうまいのでおすすめです)
くびれ女王にくびったけの暴れん坊軍団
そうしてスタジアムへ向かおうとしていると、Jリーグ特命マネージャーの佐藤美希さんが来ているという情報が入ります。飛行機を予約していた時は楽しみにしていたはずなのに、すっかり忘れてしまっていました。Instagramをフォローしているんですが、くびれがすごくて「見習おう……」と思ったばかりなのに。(そっちかよ)
気付いたのが早かったおかげで、スタジアムのイベントに出席している姿がありました。近くで派手な若い女性3人組がレッドブルを配っていたのですが、脇目も振らずに向かいました。(レッドブルは飲みました)
言葉はいりません。(あんまり生身の人間に対する美的感覚に自信がないのでうまく言えない)
フォーメーション
大分はこれまでどおりの[3-4-2-1]です。MF48川西翔太が初先発を果たして、DF29岩田智輝がスタメン復帰。ボランチを務めていたFW20小手川宏基がシャドーに上がり、FW27三平和司がトップの真ん中に入りました。
これまで勢いを出したい試合途中から見せていた布陣に近く、サポーターの中でも「こうしてみたら面白いはず」といった意見が出ていた形。そんな一手をこの大一番で使ってきました。
効用としては守備力アップといったところでしょうか。FWが本職ながらボール奪取とスペース管理に長所があるMF48川西を置くことで中盤の守備が安定し、FW20小手川が前から相手を潰すことができます。
湘南も[3-4-2-1]。FW9ジネイをベンチに置いたため前線は小柄な3人が並んでおり、左ウイングバックは右利き、左ストッパーは左利きと、大分とかなり似た形になっています。私が大好きな菊池大介はもういません……。
陽太、雄太、優太に加えて、大暉、大輝、大輝と同じような名前が多く並んでいるのが気になります。試合前にスタジアムDJとサポーターがコール・アンド・レスポンスをしているんですが、同じような語感が続くので覚えやすくて良いと思いました。
苦手のミラーゲーム
大分は今季ここまで3バックの相手に勝利したことがなく、スタートポジションでマーカーが噛み合うミラーゲームを苦手としています。それは直接的に「1対1が苦手」だからではなく、「1対1を作らない」戦術によるものです。
大分の選手たちは相手の布陣から逃げるように動いてボールを回していますが、敵陣にはスペースが少ないのでゴールに近づくほど大きな動きが必要になります。すると、マンマークで守っている相手でない限り、こちらのパスがうまくいくほど、噛み合っていたはずの守備側の相手選手がどんどんフリーになっていく仕組みになります。
そんな状況でミスが出れば、相手のチャンスです。まずは別の選手がプレッシャーに行きますが、すでにマーカーは1人分ずれてしまう形になっています。すると、しわ寄せを受けたDFが複数の選手を見なければならず、「奪いに行くよりまず下がろう」という考え方になってしまいます。
今季の失点は、おおむね上記のような形で生まれています。クロス対応で失点が目立つのは、「サイドのほうがプレッシャーが遅れやすい」ことと、「DFが深くまで下がるから合わせやすい」ことによるものでしょう。
そのため、3バック相手の試合ではとりわけ「ボールを奪われないこと」が大切になります。何をいまさらそんな理想を……という感じですが、これができればどんどん動いても大丈夫ですし、相手がフリーになっていても怖くありません。「失敗してもいいからつなげ」という現状のやり方は、この境地を目指している思想の表れです。
もっとも、ミスをしないということは決して簡単ではありません。なので、ある程度のリスクマネジメントは大切です。具体的に言えば「危険度の高い場所でリスクを避ける」ということ、逆に言えば「危険性の低い場所ではミスをしても良い」といったことです。
また、「チャンスを作ろうと動けば動くほどピンチも大きくなる」というのは、相手も同じです。「相手を動かして食ってやろう」というような狙いが大事です。
この試合では、そのあたりの意識が垣間見えたと思っています。(前置きが長い!)
最高の前半としぶとかった後半
序盤からの思想戦で先制
前半は大分が圧倒。最初のチャンスは4分、こだわり続けてきたビルドアップからでした。
まずは湘南のハイプレスが押し寄せる自陣深くで、GK21上福元直人が正面のDF4竹内彬に浮き球のミドルパス。ここで相手マーカー2枚を剥がします。そこから引いて待っていたDF5鈴木義宜が受けて、前線のFW27三平和司に低い弾道のクサビを打ち込み、落としをMF48川西が拾ってドリブル。ここで一気に数的優位を作ります。
MF48川西は首を振りながら空いている左サイドに侵攻し、MF16山岸智とのパス交換で一気にえぐってクロス……は相手ディフェンスに阻まれましたが、鍛えられているなあというプレーでした。湘南もここで「行かない、待つの」と思ったかどうかは定かではないですが、このプレーで前線の選手たちに迷いが出てきたと思います。
そして得点は直後、さきほどのプレーで得た左CKからでした。たまにキッカーを務めるFW9後藤優介がニアに蹴り出し、近付いてきたFW27三平和司がフリック。MF48川西が相手守備陣を押しやったスキに、DF5鈴木義が飛び込んで左足でねじ込みました。
先制した試合では全勝を続けている今季の大分。ここで希望が見えてきます。
選択と集中で試合を支配
その後も、大分が試合を支配します。
9分には、前線で競ったFW27三平がMF33鈴木惇に落とし、FW9後藤とMF29岩田智輝が絡んでMF27三平がシュート。11分にはFW9後藤の斜め低空クロスからFW27三平のワントラップボレーがゴールをかすめるなど、前線の動きが活発です。
理由としては、1分にバックパスを受けたGK21上福元が敵陣深くに蹴り出した時にも「あれ?普段と違う?」と思ったんですが、この試合では前線へのロングパス、ミドルパスが有効に使えていました。
湘南はプレスに行くもかわされ、ビルドアップをしようとするもスペースを埋められ、手が尽きたような状態。大分の3トップが相手のセンターバックをフリーにしたため、最終ラインでボールを回すくらいしかできませんでした。フリーなので放り込むという手もありますが、前線は小柄な選手が並んでいるので難しかったと思います。
だんだん大分のビルドアップが、湘南攻撃陣のプレスを誘い込むような状態になってきます。昔のファミスタでCPU相手に守備をしているときによくやってた、ボールを持ったまま塁を空けて相手ランナーを走らせ、飛び出したところで刺すというハメ技みたいだな……と思いました。
ハーフタイムに湘南ビール
たのしめてる、うちに飲む!!!! #ベルマーレビール #たのしめてるか #い抜き言葉
おいしかったです。
あと、きれいな人たちがたくさん歩いていました。(佐藤美希さんもいます)
ジネイに次ぐジネイ
後半開始時、湘南は坂道グループっぽい名前のユース至宝ことFW16齊藤未月→FW9ジネイ、MF6石川俊輝→FW19表原玄太という怒りの二枚替えを敢行します。FW7神谷優太がボランチに下りて、FW19表原はシャドーに入りました。攻撃の圧力を増すとともに、翻弄され続けたプレスを改善する目的もあったでしょう。
その効果はすぐに表れ、48分にFW17端戸仁のパスからFW9ジネイが抜け出して左足シュート。これは大きく外れましたが、55分にも裏に抜けたFW9ジネイのシュートがGKを強襲しました。湘南はプレスが安定したことで中盤のスペースも埋まり、ミドルシュートも打てるようになってきます。
大分は53分にMF20小手川のスルーパスから裏抜けFW9後藤が右足強シュート。58分にはMF16山岸の鋭くて精度も高いアーリークロスからFW27三平がヘッド。いずれもGK1秋元陽太のスーパーセーブに阻まれました。FC東京での動きがウソのようだ……。
湘南は58分にMF8山田→MF13山根視来で最後の交代カードを消費。大分は66分、FW27三平→FW18伊佐耕平、MF16山岸→DF3黒木恭平の2枚替えで「いつもの」感を出してきました。72分に放ったFW18伊佐のシュートは相手が出した手に当たったように見えましたがファウルはなし。
システム変更で形勢逆転
大分は81分、負傷したMF20小手川をMF24姫野宥弥に代えて、フォーメーションを[5-3-2]に変更。元気なMF24姫野をアンカーに入れて中盤のスペースを消す目的があったのでしょうが、サイドを蹂躙されるきっかけになってしまいます。
そんな84分、湘南にこの試合で最大の決定機が訪れます。途中出場のMF13山根が左サイドを切り裂き、大分DF29岩田智輝を完全に振り切ってクロス。真ん中で待っていたFW9ジネイがボレーで合わせましたが、ボール半個分ほど外れました。
その後も湘南攻撃陣は左サイドを狙ってドリブルでしかけ続け、湘南サポーターの声量も増大。クロスに合わせようとDF4アンドレ・バイアを前線に上げるなど得点の香りがしてきます。
この戦いが終わったら結婚するんだ……
ところがそんな90分、この日も不安定なジャッジが続いていたレフェリーが集大成の仕事を成し遂げます。湘南の右からのロングスローを大分DF6福森直也がクリアミスしたのを発端に、FW9ジネイの飛び込みとDF4アンドレ・バイアのシュートをGK21上福元直人が立て続けに防いだ直後のこと。
遠目ではよく見えなかったんですが、球際で争ったGK21上福元とDF4アンドレ・バイアが交錯。その後、DF4アンドレ・バイアに2枚めのイエローカードが提示され、退場になってしまいます。
で、映像で見てみたんですけど、GK21上福元が倒れているのは直前の交錯によるもので、DF4アンドレ・バイアとは関係ないところ。もし故意に蹴っていたとしたらイエローは不適切でしょうし、目視できるほどの接触はなさそうでした。不運なアンドレ……。
いずれにせよ、攻勢をかける湘南の攻守の要となっていた選手の退場は、大分にとって大きな味方となるジャッジ。湘南のパワープレーは勢いがなくなり、大分攻撃陣が前線で時間を作れる場面も増えてきました。DF29岩田のコーナーキープ失敗などもありつつ、試合はそのまま終了。大分が見事に勝ち点3を得ました。
まとめ
これまで片野坂知宏監督は「自分たちのサッカー」型の指導者かと思っていたのですが、相手の特長を逆手に取ったりする狙いも見られました。それは相手が湘南だったからなのかもしれませんが、今後に向けては好材料だと思われます。
疑ってすみませんでした!!!!