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たぶんサッカーの話が多いです。

【U-20W杯】世界のバヌアツをベネズエラが粉砕、秩序と混沌のドイツ×メキシコ

U-20ワールドカップ4日目は、大田ワールドカップスタジアム

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ここは15年前、2002年ワールドカップ本大会決勝トーナメント1回戦の韓国×イタリア戦があった場所。まだサッカーにハマりかけの10代前半だった自分にとっては、ああ、こういう側面もあるスポーツなんだなということを考えた原体験的な試合でした。

あそこでヴィエリがヘディングしたんだな、たしかブッフォンがPKを止めたんだよな、チャ・ドゥリのオーバーヘッドすごかったな、という感慨。そして、マルディーニの包帯姿はあの辺だったんだな、トッティが倒れて退場したのはあっち側か、うおおアンジョンファン決めた……、ってかモレノとかいう審判なんなんだよ!!!と、試合を見ながら記憶がよみがえってくるようでした。

この日はバヌアツ×ベネズエラ、ドイツ×メキシコの2試合。対照的な展開となりました。

 

ソウルから大田へ

大田市はソウルから南に約150kmの学研都市。時間があったのでブログを書きながら行こうと、ムグンファ号(片道1080円)という特急列車で向かいました。だいたい2時間くらいの旅です。

ところが2時間たっても到着しないので、乗り過ごしたかと思いました。前科(仁川ミス)を思うと自分のことが信用できません。

前に書いたブログのとおり、大田からでもその日のうちにソウルへ帰れますが、移動疲れも懸念していたので、この日は大田に泊まる予定。1泊2000円程度のゲストハウスへ向かいます。地下鉄網がそれなりにあるため、他の地方都市に比べれば移動は楽です。

荷物を置いてから、スタジアムへ。Googleマップを素直に参考にして、地下鉄ではなくバスで向かうことにしました。ただ、目的のバスが来ない来ない。韓国では時刻表という概念があまりないらしく、「20分おき」みたいな形になっています。それをGoogleは集計していないため、概算値になってしまうのです。

そんな感じで1時間ちょっとかけてスタジアムに着きました。郊外感あふれる場所にあり、遠くには立ち並ぶ高層ビルが見えます。

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ちょっと余裕を見てはいましたが、この時点でキックオフ30分前。ところが、その後もトラブルが続きます。まずはなんと、チケット発券所がスタジアムの真逆にあるとのこと。外周をぐるっと15分ほど歩くことになりました。

そしてさらに、チケットの発券に成功したものの、入り口は席種に近いところを使わなければならない模様。近道は封鎖されていたため、再びコンコースを3/4周ほど回る羽目になりました。なんなんだ。

やっていられなかったので即ビール。到着はギリギリになり、国歌を早歩きで聴くことになりました。

 

ベネズエラ×バヌアツ

前線の個人技を生かして攻め込むベネズエラに対して、[5-4-1]でしっかり受けにいったバヌアツ。何度もチャンスを作られながらも人数を掛けて守りますが、30分にしっかり左サイドをえぐられたクロスから、上がってきたディフェンダーのヘディングで失点してしまいます。

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その後もベネズエラが攻勢を緩めることなく、結果は0-7の大敗。オセアニア予選を2位で勝ちあがったイギリス連邦の小さな島国は、メキシコ戦に続いて2連敗となりました。

それにしても、ベネズエラのMF7ペニャランダと中盤のMF6エレーラはちょっとレベルが違う感がありました。とくに攻守がはっきりしているプレースピードでは、ほぼ好きなようにプレーしていた印象です。また、途中から出てきたMF10ソテルドは、かなりの低身長ながら身体が強く、ドリブルでガンガン抜きまくっていたのもすごかった。

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バヌアツはサポーターも少なからず来ていました。応援スタイルは南米やアジアの流派に近く、太鼓がわりに口で「ダンダンダン!」と叫ぶアナログ仕様。「Mi save mekem evri samting, long paoa blong Kraes ya we i stap mekem mi mi strong.」という大きな横断幕も掲げられています。

何を書いているのか気になったので調べてみたのですが、この文章が書かれていると思われるバヌアツ公用語のビスラマ語はGoogleに対応しておらず、英語の翻訳サイトにメッセージを送ってみても「20時間かかるけどいい?」と返ってくる始末。

ウィキペディアにはフランス語と英語の混成語とありますし、せっかくなので自分で訳してみることにしました。単語は辞書のほか、青年海外協力隊でバヌアツに行かれていたらしい、この方のブログなどを参考にしました。

まずMiは「私」。saveは「知っている」(仏語のsavoir)でしょうか。mekemは「作る」(英語のmake)、evri samtingは「なんでも」(every somethingって感じ?)。longはどうやら多義的な前置詞で、paoaは……。これが見つからない。

しかし、そういった感じで調べていると、「paoa」「Kraes(キリスト)」に関連する言葉で、海外の文献検索(Googleでは出てこなかった)に横断幕どおりの文章があることが分かりました。それも、どうやら新約聖書の「フィリピ書」の一節に。それなら英語の対訳は見つかりそうです。

それは4-13の「I can do all this through Christ who gives me strength.」という部分らしい。えっ、なにこれめっちゃシンプル。日本語に訳すと「私を強くしてくださるイエス・キリストによって、なんだってできるのです」といった感じでしょうか。バヌアツの選手たちはキリストを背負って戦っているんですねえ。

こういう感じで、よく知らない国のことを知ることができるのも、サッカーというスポーツの良いところ。試合は残念な形に終わってしまいましたが、記憶に残る1試合目になりました。

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試合後の選手に対しては、大きな拍手が送られていました。

 

ドイツ×メキシコ

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さきほどの試合とはうってかわって、テンポの速い展開になりました。

ドイツは[3-1-4-2]と[4-1-4-1]の可変システムで、相手のポゼッションには必死で詰めて行き、攻撃では逆サイドからの展開で一発を狙うという形。対するメキシコは[4-4-2]のオーソドックスな布陣から、ドリブルと細かいパスで強引な突破を繰り返します。

試合は一進一退の攻防を繰り返して0-0の引き分け。ドイツは秩序立った精密な崩しはあってもストライカーのスキルが足りず、メキシコは選手のスキルはあっても混沌として狙いが足りず、という印象でした。でも、おもしろかったです。

 ドイツはインサイドハーフに入っていたMF7コンデが異才。プレスでは強度のあるタックルができ、安定したボールタッチとスペースメイクで攻撃にも出られるタレントでした。リベロのDF5ギンバーは競ってよし、さばいてよしのオーソドックスでハイクオリティーなディフェンダー。他は「昔のドイツ」感ある大型選手が目立ちました。

 メキシコはボランチのMF6セルバンテスが目を引きました。左右のプレースキッカーを任されるほどのキック精度に加えて、下がってさばく後方の司令塔も担当。MF7アントゥナなどサイドから突破できるタイプも多かったです。ただ、中盤で[5-5]みたいになるケースも多く、ショートカウンターには弱そうでした。

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最後に

試合の合間に観客がビジョンに抜かれるんですが、仕事終わりに見に来ていた軍人さんたちが喜んでいたのが面白かったです。

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日本は一般人と自衛隊員との距離感があるせいで、こういう立ち位置の人(婉曲)とはなじみがありませんが、韓国は街をカップルで歩いている人も多かったりして、わりと身近な存在なんですね。そこが一番驚いたことかもしれないです。