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たぶんサッカーの話が多いです。

【J2第13節 大分×名古屋】孫会社キャストで親会社レクサスに殴り勝ち【これは決して事故ではない】

黄金週間の過密日程も終わり、前節・岐阜戦から中5日で迎える名古屋戦です。韓国遠征前最後のホームゲームということで、現地に行っておきたかったのですが、仕事が入ったため叶いませんでした。

もっとも、私が現地に行ったホームゲームは1分2敗。行っていなかった場合は2勝1分ということで、最近は遠慮しておこうという思いも出てきました。ちなみに、J1昇格を成しとげた2012年も終盤戦まで勝ちなし状態だったため、これはこれで縁起のいい状態なんじゃないかとも思います。

 

王者・名古屋グランパス

今季からJ2の仲間入りを果たした名古屋は、昨季のJ1リーグ戦で16位に入ったクラブ。J2よりJ1が上にあるという当然の事実を加味して考えれば、今季のJ2を構成する22チームの中では最上位にあたります。すなわち、王者です。名将小倉!

そんな王者・名古屋グランパスには今季、風間八宏監督が就任。さらにはGK1楢崎正剛が男気残留を果たし、広島からJリーグのエース・FW11佐藤寿人を補強するなど、今季もJ2随一の陣容を誇っています。京都の田中など居なくなってしまった選手のことを思えばキリがありませんが、昇格候補の筆頭であることは間違いないでしょう。

しかし、大分は名古屋には負けられません。

名古屋グランパスを実質的に所有するトヨタ自動車自動車製造の王者ともいえる存在。2016年には、ダイハツ工業の全株式を取得して子会社化しました。そんなダイハツ工業の子会社にあたるのが、大分トリニータのスポンサーを担ってくれているダイハツ九州(本社・大分県中津市)。両者の関係性としては「孫会社」という間柄です。

大分は今季、片野坂知宏新監督のもとで、若手を中心としたテクニカルなサッカーを展開しています。軽乗用車を主体とするダイハツ車になぞらえて言えば、勝負の新車種としてダイハツ九州の中津工場ですべてを製造しているキャスト型サッカーといったところでしょうか。

一方の名古屋はFW11佐藤、FW28玉田圭司、GK1楢崎ら元日本代表選手をそろえ、FW9シモビッチやFW10フェリペ・ガルシアなど一般のチームでは買えない外国籍選手も所属。J2のレベルを考えると、トヨタ自動車が世界を意識して展開する高級ブランドであるレクサス型サッカーと言えるかもしれません。

もはや下馬評としては、その差は歴然です。しかし、そんな力関係でこそ燃えてくるのが大分トリニータというクラブ。手前味噌ですが下剋上という言葉がこんなに似合うチームはないと思います。

さらにJ発足初年度の1993年、日本人初ゴールを決めたのは名古屋の風間八宏監督でした。ここまでは有名な話だと思いますが、DAZN放送席によると当時アシストを記録したのは大分の片野坂知宏監督。決めるほうと、助けるほう。両者の間には25年前の時点で、日なた/日陰という関係性があったようなのです。

ここまで名将と称される指揮官の湘南、松本、岐阜との対戦においてだけ、「相手に合わせる」ような戦略をとって勝ち点を掠め取ってきた片野坂監督が、この試合を意識していないはずはありません。きっと、風間八宏を乗り越えるため、何かをたくらんでいるはずなのです。

 

フォーメーション

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前節・岐阜戦で[4-4-2]の奇襲攻撃をしかけた大分は、今季の基本形である[3-4-2-1]。やはり今季初の4バックは、圧倒的パスワークの岐阜を意識した戦法だったようです。もっとも、先発の顔ぶれはいつもと同じ。信頼した選手が徐々に固定化されてきているようです。

名古屋はトップ下を置いた[3-5-2]。苦手意識のあるFW19押谷祐樹が今季3試合目の先発を果たし、FW11佐藤が復帰しています。警戒していた199センチの長身FW9シモビッチが先発を外れました。

これまでの試合は断片的にしか見ていないのですが、大分にとって苦手となるのは長身選手で起点を作られ、ずるずると最終ラインが下がっていった結果のクロス対応です。そこにピッタリ適合する選手がいなくなったのは好要素でしょうか。

もっとも、ボランチにはボール扱いに長所のある2人が並び、トップ下にはスペース活用のうまいFW11玉田が入っているということで、簡単に守れるだろうというのは甘い考えです。

 

試合

行ったり来たりの少ない序盤

試合の入りはゆったりとした展開。ボールが動くテンポが遅いというよりは、お互いが攻めを完結させようと、しっかりボールをつなぐ形になりました。大分が4枚でつなぐところに名古屋のプレスは3枚、名古屋のキープに大分は引いてゾーンで受けており、システムの噛み合いは気にならない程度でした。

大分にとって最初のチャンスは12分、相手のパスミスを奪ったMF48川西翔太が持ち上がり、裏抜けFW9後藤優介にロングパス。名古屋GK1楢崎が大きく飛び出て処理しましたが、いい形でした。

一方、最初の決定機は名古屋。19分、右サイドでボールを奪ったDF15宮原和也が中央のMF28玉田にパス。ドリブルで深くまで侵入したところで左に抜けたFW19押谷を使い、リターンをもらったところでMF28玉田がボレーもGK正面でした。MF28玉田は動きが鈍いけど、ちょっと、太くなった……?

 

まさかの先制点

直後、大分のスコアが動きます。カウンター気味に入った縦パスをFW18伊佐耕平が踏ん張って落とし、拾ったのはFW9後藤。うまく抑えたドリブルシュートは名古屋GK1楢崎に阻まれましたが、こぼれ球をファーに走り込んだMF20小手川宏基が決めました。

片野坂監督は今季、「ファストブレイク」(第一の破壊?/実際はFast Break「速攻」のことらしい)という言葉をよく使っているようですが、まさにその形による得点でした。FW18伊佐がボールキープをしてFW9後藤へ的確に落としたことで、相手が陣形を整える前に攻め切れました。

もしそこで楽な体勢でバックパスをしてしまっていれば、相手の戻りが間に合って別の攻め方を模索する必要があったと思います。ここはFW18伊佐の身体の強さが生きた場面でした。

大分は34分にも相手CKのこぼれ球をFW9後藤が受けてドリブルで切り込み、相手と2対2を作ることができました。駆け引きに敗れて「ブレイク」をすることはできませんでしたが、戻りの遅い名古屋に対しては速攻が効くことが分かってきました。

39分の攻撃はオフサイドに終わりましたが、ファストブレイクに失敗した後も、MF14岸田翔平の抜け出しからチャンスを作りました。前半は1-0で終了。上出来です。

 

ラッキーな追加点と素晴らしい速攻

後半も同じようなペースで試合が進みますが、思いのほか早い時間帯に追加点が入りました。

51分、大分はカウンターで右サイドでボールを受けたFW9後藤が左サイド深くにサイドチェンジ。ゆったりと受けたFW20小手川が鋭いクロスを送ると、シュートを打とうとしたFW18伊佐が相手DFに倒されPKを得ます。

ラッキーな形でゲットしたPKを、FW9後藤がしっかりとしたインパクトでゴール左側を射抜き、理想的な展開で2点目が入りました。さすがにあのジャッジは厳しいと思いますが、こちらも松本戦でゴールを取り消されているわけで、シーズン通してトントンになるのかなと考えるのが良いでしょう。

名古屋は54分、DF3櫛引一紀に代えてFW9シモビッチを投入。ついに恐ろしい長身マッチョストライカーが出てきました。MF13磯村亮太が右ストッパーに入り、スイーパーにはDF39酒井隆介ボランチにMF29和泉竜司、左ウイングバックにFW18押谷祐樹と大幅な布陣変更を敢行しました。

ところが直後の57分、相手の不安定な連携を突いた大分が決定的な3点目を手にします。左サイド自陣深くからのDF6福森直也のロングフィードをFW18伊佐がジャンプで収め、相手DFが食いついてきたところにスルーパス。FW9後藤優介が抜け出してGK1楢崎をかわし、無人のゴールに蹴り込みました。

これで勝負は決まりでしょう。あとはトリニータオーレを歌えば締まります。名古屋はひとまず、FW18押谷に代えてFW25杉本竜士を入れました。

 

見せ場を作らせる優しさからの、エースの無慈悲なトドメ

大分は72分、MF16山岸に代えてDF29岩田智輝、FW18伊佐に代えてMF32前田凌佑を投入します。FW9後藤がワントップ、MF48川西翔太がシャドー、ボランチにMF32前田、ウイングバックは左右交代という新しい布陣です。一方の名古屋は77分、FW11佐藤→FW10フェリペ・ガルシア。

そんな81分、名古屋はさっそく途中投入の2人で追いすがります。左サイドを抜け出したFW10ガルシアが中央に優しいパス。受けたFW9シモビッチが足裏ターンでかわし、ゆったりとしたシュートをファーサイドに流し込みました。やはりこういうタイプは苦手だ……。いずれにせよ、まだトリニータオーレを歌っていなくて良かった。

しかし、今日の大分は、もとい、今日の後藤はこんなところで終わりません。

85分、中盤でMF32前田がプレスバックしてボールを奪取。拾ったMF48川西が相手のスライディングを受けるも、再びMF32前田がスルーパスを送ります。そこに誰も付いて来ない状態で抜け出したのはFW9後藤。並走する二人を一瞥もせずに、元日本代表GK1楢崎が守るゴールマウスにズドンと叩き込みました。

これがJ2リーグ戦で初めてのハットトリック。それも王者・名古屋戦。こういう選手をエースって呼ぶんだぜ、と自慢したくなるような活躍でした。5年目のジンクスとか、変わらない物腰とか、いろんな思いが去来してきますが、高校時代から腐らず続けてきた努力の賜物でしょう。

もちろん、振り返るのはまだ早い。これからもたくさん点を取ってもらって、別のユニフォームを着る時にでも、いろいろ思い返していきましょう。

 

トリニータ、オーレ

ここでスコアは4-1。名古屋のモチベーションも完全に消失しており、もう試合の見どころはありません。もっとも、今季初の3点差勝利が目前。そうなると、今季初の「あれ」がサポーター席に流れます。

大分トリニータには、勝利が決定的になった時に歌うチャントがあります。それが「トリニータオーレ」。タイミングに明確な基準があるわけではありませんが、これまでの経験からすると、複数点差でのアディショナルタイムというのが慣例でしょうか。

最も大きな舞台で言えば、2008年のナビスコカップ決勝、ウェズレイ(5/14修正)のゴールで清水を突き放した直後に歌われました。最近では2016年J3最終節・鳥取戦で昇格を目前とした状況でも歌われました。そんなクラブの節目を飾ってきた、想い出深いチャントであります。

このトリニータオーレですが、「このチャントを歌って負けた試合がない」というジンクスが語られたりもします。もちろんこれは条件的なバイアスなのかもしれませんが、さらに「そもそも失点もしていない」というのはちょっとすごい神通力。まあ、それも相手の戦意が喪失している場合に歌うからなのでしょうが、そういう都市伝説的な言われ方がされるくらいに、愛されているチャントなのです。

こんなふうに2点差の後半20分ごろに歌うのは無粋というものですが、どんなゴールを見られなかったことよりも、トリニータオーレを歌えなかった(聴けなかった?)ことのほうが、この試合に行けなかった後悔の程度が大きかったのも正直なところ。8千人超(から名古屋サポーターを引いた人数)の皆さんは勝ち組です。

 

まとめ

ぶっちゃけ名古屋の守備が脆すぎて、大分の戦術うんぬんという話ではなかったのかもしれませんが、金があるチームに勝つという痛快さでやられてしまったので、いまはもう片野坂監督最高~~~~って感じです。

あと、名古屋はウイングバックに普通の守備ができる選手を使ったほうがいいと思いました。(正論マウンティング)

 

また、次節・長崎戦の翌日からは韓国に居るので、これからどうやって更新しようか迷い中です。VPNの設定をしているのでWi-Fi環境さえあれば見られるのですが、法的にグレーな手段を使ってブログを書くのはなんとも……という。ひとまず、下手したら誰も興味ない国の未成年ばかりを見続ける記録と化す可能性もあります、ということだけお伝えしておきます。