Cateblo.jp

たぶんサッカーの話が多いです。

【J2第12節 岐阜×大分】岐阜「4バック!?うそついたからパス1000本通す」【俺たちのゴレアドール×2】

岐阜県岐阜メモリアルセンター長良川競技場へ行ってきました。ここへ来るのは2回目で、その時はどのチームが相手だったか忘れました。

たしか大分の試合では、お隣の長良川メドウ球技場に行ったことがあったんですが、押谷祐樹(現・岡山)にボコボコにされたので記憶があいまいです。

 

大分から岐阜まで

朝早くに自宅を出て、特急ソニック号で博多駅へ向かい、福岡空港から中部国際空港に飛びました。黄金週間の新幹線に乗りたくなかったのもありますが、飛行機で遠征するのが個人的流行です。

ネット中毒というかSNS中毒なので電波が入ればすぐにスマートフォンを触ってしまいますし、WiMAXが入るところならDAZNを見てしまいます。飛行機に乗っているときくらいしかまともに読書とかしなくなったので、週末ごとにそんな機会があるのは幸せなことです。

空港では、たまたま大先輩と会ったのでレンタカーに同乗させていただき、スタジアムへ向かう途中でグリーンカレーを食べました。岐阜のチームカラーが緑色だからです。着いてからは奥飛騨ウオッカを飲みました。こちらは単なる好みです。

https://www.instagram.com/p/BTx8zniF_Nt/

Окхида Водка

 

ナダレ軍団FC岐阜

岐阜といえば、J2リーグ下位の常連クラブといった印象です。(とても失礼)

2008年のJリーグ参入以降、常に2桁順位をうろうろし続け、2011年にリーグが20チームを超えてからは、ここまで6年間で5度の20位台フィニッシュを達成。最近は降格制度ができたため、常に筆頭に名が挙げられています。

ところが2015年、大分トリニータはそんなFC岐阜をさしおいてJ3リーグに降格。その年、岐阜はラモス瑠偉監督を擁して金満クラブのような強化方針を続けていましたが、われわれにとって「ラモスに負けた」という傷はいつまで経っても癒えません。

もっとも、岐阜も2016年途中、大分がJ2に居ない間にラモス監督を解任し、「やっぱりネームバリューだけじゃ仕事はできんな」と方針を転換。今季からはかつて甲府を昇格させた大木武監督が指揮を執り、内容と結果の両面を追求しているようです。

そういえばこの日、スタジアムに着いて最初に感じたのは、「あれ、意外とサポーター多い?」ということでした。長良川メドウの時は3500人くらいしか収容できないのに、半分くらいしか入っていなかったためです。

ネタ的に扱われやすい要素ではありますが、これはラモスの影響も大きいのだろうと思います。実際、この試合は7008人の観衆が記録されましたが、ラモス初年度の2014年にその水準に達していたようです。

f:id:concatenazioni:20170508172640j:plain

単に結果を出すだけでは誰も見てはくれないので、話題になる→結果を出すという流れが理想。そういった意味では、今季の結果がターニングポイントになりそうな気がします。だからこそ、ここでつぶしておいて、ラモスの恨み(?)を晴らさねばなりません。

 

フォーメーション

f:id:concatenazioni:20170508074008j:plain

まさかまさか!ここにきて片野坂知宏監督が動きを出してきました。今季初めての[4-4-2]スタートです。(つい試合前に書いたブログでやり方は変えないって書いたばかりだったのにウソでしたすみません)

concatenazioni.hateblo.jp

これまで試合途中で4バックにすることはありましたが、キックオフは毎回[3-4-2-1]。4バックは実戦経験に乏しいため、奇策と言っても不都合はないでしょう。

メンバー自体はいつもと同じ。役割の変わらないGKとボランチを固定したうえで、最終ラインには、いつもの3バックを左から並べ、普段は右ウイングバックのMF14岸田翔平を右サイドバックに下げます。

ウイングバックのMF16山岸智を右サイドハーフ、右シャドーのFW20小手川宏基を右サイドハーフになり、ツートップは現状の陣容でもっとも能力の高いFW9後藤優介とFW18伊佐耕平の二人が並びました。

この布陣変更には、[4-3-3]でパスを回しまくる岐阜に対して、バランスよく守備網を配置する狙いがあったと思います。連続的な短いパスに対応するには、細かいスライドが必要になるため、中盤に負担のかかる[5-2-3]のような守り方はできないためです。

また、そこでいつもの形を下げた[5-4-1]にしてしまうと、今度は前に出て行くことが難しくなります。もし3バックを崩したくなければ、[3-1-4-2]で相手をサイドに押しやるという手もあったと思うのですが、そこは片野坂監督の嗜好でしょう。

岐阜は想定どおりの[4-3-3]。戦術・庄司というべきか、アンカーのMF10庄司悦大がどんな時も攻撃に顔を出してきます。他にもDF15田森大己、DF16福村貴幸といった大木感あふれる選手や、MF8シシーニョやMF28永島悠史などボールスキルの高い選手を配置。そして最前線はFW24難波宏明、バレー役です。しかし、平然とニックネームで登録されているFW7田中パウロ淳一はなんなんだ……。

 

試合

全体の流れ

フラットなスリーラインで構えて守る大分に対し、岐阜がボールを握る形で試合が進みます。

岐阜はセンターバックの2人が大きくサイドに開き、その間に下りてきたアンカーのMF10庄司がボールキープ。そこからフロントボランチの2人が相手ボランチの死角を狙ってパスを受けます。

そこにボールが入れば、スイッチオン。サイドに多くの選手が密集して前進するため、網目のようにインターセプトすることができず、大分の守備陣はいったん下がって行くしかありません。するとサイドを起点に再びMF10庄司がパスワークに絡みつつ、そこからペナルティーエリア内への侵攻を試みます。

大分守備陣は無理に奪いに行こうとせず、ゴール前の陣形をコンパクトにすることで対応していきます。しかし、「取れそうで取れない」ポジションの相手選手に手を焼き、不用意に交わされる場面もありました。湘南戦で大分が展開していたのと同じようなやり口です。

一方、岐阜の密集は大分の攻撃を無効化する効果もありました。大分もいつものように、ショートパスをテンポよくつないでいく形で攻め込みたいところですが、勘所で数的優位を作られる状況。うまくスペースを見つけたいところですが、前半は狙いが持てないままとなりました。

 

次々と岐阜に決定機

岐阜にとって最初のチャンスは11分、左サイドでボールを奪ったDF16福村がドリブルで駆け上がり、アーリークロスをFW24難波がどフリーでボレー。大分のGK21上福元直人がビッグセーブを見せましたが、やはり斜めのクロス対応には不安が残ります。

次は26分、ビルドアップ中に大分GK21上福元がDF鈴木義宜へのパスを失敗。拾ったMF11古橋亨梧がカットインシュートを放ちますが、左へ外れました。最終ラインで組み立てるのであれば、このようなミスは最小限にしたいところです。

大分は自陣深くで奪ってからロングボールを放り込むくらいしか手がありません。37分には同様の形からMF33鈴木惇のミドルでチャンスを作りましたが、跳ね返りを拾ったFW18伊佐のボレーは惜しくも外れます。

岐阜は40分、ゴール左斜め前30メートルの位置で獲得したFKをMF10庄司が蹴ります。ふわっとしたボールは大分ディフェンスを越えていき、ゴール前で岐阜FW7田中(パウロ)がヘッド。クロスバーの上を越えましたが、やはり斜めのクロスに対応できず。危ない形です。

前半は岐阜(予測変換でいちいち「義父」と出るんだけど何なの)の一方的な展開でしたが、大分にとっては幸運にも0-0で終えました。

 

f:id:concatenazioni:20170508172658j:plain

ハーフタイム、武将とふなっしーのニセモノみたいなゆるキャラ(名前は「かわばたくん」)が歩いていた。

逆サイドを使う大分、密集をはがされる岐阜

後半は大分が盛り返します。岐阜の密集を逆手に取って、逆サイドに展開するロングボールを使えるようになったのがきっかけでした。

50分、大分にこの試合で最初の決定機が訪れます。スイッチを入れたのはやはりGK21上福元でした。左サイドのスローインからバックパスを受け取り、そのまま右サイドのMF14岸田にロングパス。これは相手にクリアされますが、セカンドボールをFW20小手川が拾って、中央のMF33鈴木惇に送ります。

左右に振られた岐阜守備陣は中央が手薄になり、そこを狙ったMF33鈴木惇は前線のFW18伊佐に縦パス。落としをFW9後藤が拾って、今度は左サイドのMF16山岸へ。最後はマイナス方向のクロスに飛び込んだMF33鈴木惇がふかしてしまいましたが、岐阜のお株を奪うようなサイド攻撃でした。(ここ超美しいので、できれば映像で見てほしい)

大分は55分にも、右サイドからのスローインにMF48川西が抜け出し、中央のFW20小手川を使ってFW18伊佐が右サイドで突破し、クロスを再びFW20小手川が合わせるというシーンがありました。この同サイドで完結する攻撃なんかはすごく岐阜っぽいですが、だいぶ圧力を掛けられるようになってきます。

そして63分、待望の先制点が大分に入ります。左サイドでMF16山岸が奪って縦に抜けたFW18伊佐にパス。相手のプレスに負けず倒れ込みながら前線に配球すると、FW9後藤と相手ディフェンダーが並走する形に。いったんは相手がクリアをしましたが連携ミスとなり、拾ったFW9後藤がGKに当てながらもゴールへ蹴り込みました。

後半になって意識づけられていた、「相手の密集を抜けるべく、すばやくスペースにボールを出す」という狙いが出たゴールだったと思います。また、前線で身体を張ることができるFW18伊佐の強みも出ました。密集の多い試合になると、こういう選手の存在がとても大きいです。

 

両者、狙いを持って攻め合う展開に

大分は66分、MF16山岸→MF17國分伸太郎という、いつもの交代。岐阜は70分、FW7田中(パウロ)に代えてドリブラーのFW22山田晃平を投入します。「逆サイドの密集崩しをやってくるんだったら、こっちもそこから突破してやらあ!」という分かりやすい交代です。

ここから岐阜は右サイドからのFW22山田の突破、大分はサイドを使った崩しといった形で、一進一退の攻防が続きます。もっとも、行ったり来たりはしながらも、決定的なシーンはありません。

そんな76分、大分が追加点を手にします。

相手パスミスを右サイドでFW20小手川がカットし、落としを受けたDF5鈴木義宜がダイレクトの縦パスでスイッチオン。FW18伊佐が踏ん張ってMF33鈴木惇が落としをもらって、スペースのある左サイドのMF48川西にパス。さらに左サイドを突破するかと見せかけ、相手が寄ってきたところで右サイドにサイドチェンジ。ここで勝負ありでした。

駆け上がったMF20小手川がゆっくり受けると、中央の動きを見ながらふわっとしたクロス。相手守備陣を一山越えて、ゴール前に走り込んだFW9後藤が頭で決めました。斜めパスをふんだんに使った美しい展開から、さすがエース!というゴールです。

岐阜は直後、MF28永島→DF2阿部正紀を交代。フォーメーションを[4-4-2]に変えて、「殴り合え!」というメッセージを発します。DF2阿部は右サイドバックで、DF17大本祐輔が左サイドハーフ、FW11古橋がツートップの一角というシステムです。

 

殴り合いに強い山田

 ここからの岐阜は人が変わったかのように推進力を増していきます。さっきまでゆったりとボールを回していたはずのMF10庄司はひたすら持ち上がり、右サイドのFW22山田はヘスス・ナバスのように縦突破を繰り返し、最終ラインに入っていたはずのDF27ヘニキはいろんな競り合いに参加。秩序がある人ほど怒らせると怖いという学びがあります。

そんな83分、岐阜が1点を返します。対人守備に不安のある大分MF17國分に対して突っかけ続けた岐阜FW22山田がゴリゴリと右サイドを抜いてクロスを配給し、綺麗にニアヘッドで合わせたのは大分DF6福森。豪快なオウンゴールとなりました。大分の伝統として「ドリブラーが苦手」というのがあるんですが、しっかり今季も受け継いでいるようです。

嫌な時間帯での失点に危険な香りもしましたが、今節の大分はここからがしぶとかったです。84分にFW20小手川→DF3黒木でサイドハーフにガソリンを注入すると、88分には岐阜MF6シシーニョが鬼門のアーリー気味クロスを上げたが、大分DF4竹内がマークを外してまでアグレッシブなクリア。これまで苦労し続けてきたボールにしっかり対応しました。(これ、地味に超ビッグプレーだと思いました)

そして89分にはFW18伊佐→MF28坂井大将の交代で、フォーメーションを[5-4-1]に。相手の[4-4-2]にしっかり人数を余らせて対応します。岐阜もDF17大本→MF14風間宏矢で追撃を試みますが、大分はカウンターにもしっかり出られる余力を見せつつゲームセット。素晴らしい内容で2-1の勝利を収めました。

 

まとめ

とんがったチーム同士が戦うとこんなにおもしろい試合になるのか、というたいへん幸せな90分間でした。

普段の大分は本来、できるだけボールを握りたいチームですが、岐阜の練られたポゼッションの前には劣勢になるしかありませんでした。しかし「それならば」といったん守りに回って、まずは耐えるべきところを耐えました。そして「さあ、行くぞ」と攻めに出たところでしっかり2得点。このような状況判断はなかなかできるものではありません。

もちろん、これほど一瞬一瞬のプレーを楽しむことができたのは、岐阜のサッカーが素晴らしかったからこそ。大分がやりたいプレーを高精度で遂行する姿を見て、選手も監督も悔しさがあったことでしょう。

実際、岐阜のパス本数は934本。大分は389本なので大きく及びません。また、ボール支配率も69:31。大分のプレースタイルを考えると、内容面では完敗です。しかし、そんなコンプレックスがあったからこそ、この勝利にはカタルシスがありました。

これまで片野坂監督は「相手に合わせる」サッカーを避けていると思っていましたが、この連戦での松本戦、岐阜戦は狙いの分かる準備をしてきています。それもチームの土台を壊さない形で、効果的な手段を取ろうとしています。「まだまだ引き出しは使い果たしていない」。そんなメッセージが込められているようでした。次節・名古屋戦が楽しみです。

f:id:concatenazioni:20170508172841j:plain