【J2第11節 大分×松本】過密日程で嫌らしさ激減、きれいな反町にクリーンシート【リアルタイムレビュー】
暦の上でもゴールデンウィークとなり、いよいよ過密日程の始まりです。
前節・京都戦から中3日、次節・岐阜戦まで中3日という過酷さに加えて、今節の相手はハードワークで慣らしている松本山雅FC。敵将は日本でもっとも悪役が似合う反町康治監督ということで、とっても嫌な相手です。
最強の新参、松本山雅
1999年にJリーグ参入した大分トリニータも大した古参意識はありませんが、松本がJFLからJ2に昇格したのは2012年。たった5年前の新参です。
大分トリニータで言えば、2004年くらいの段階。マグノアウベスと吉田孝行が大半の得点を決めて、ファンボ・カンが監督を務め、オランダのユトレヒトからパトリック・ズワーンズワイクを獲得してホルホルしていた時期といえば分かりやすいでしょうか。
当時と違って2部リーグのレベルも上がり、単なる「通過点」ではない時代になっています。そんななかで一度は1部に昇格した経験があるというのもすごいこと。まさに「最強の新参」といったキャラクターです。
観客動員数が1試合平均15000人を超えているのも立派なもの。ホームタウン松本市の人口が25万人弱(大分市の半分以下)で、アルウィンの収容人数が2万人であることを考慮すれば、とてもすごいことなんじゃないかと思えてきます。
最近では統率の取れたクラブ愛やサポーターの独特の芸風、また監督のキャラが立ちすぎていることなどから、他クラブのサポーターから揶揄されることも多いようですが、そういうときは我が身を振り返らねばなりません。
J参入5年くらいの時、自分が応援するクラブの文化はどうだったのでしょうか。いわゆる欧州(南米)かぶれのイキリオタクとしか言い様がない振る舞いをしていたサポーターも多かったのではないかと思います。(SNSがなくて良かったね)
2012年J2最終節、大分が昇格をかけた試合で対戦した試合の直前に、松本サポーター2人が「SEE OFF」(J1にお見送りという意味だったんですかね?)というゲーフラを掲げて、大分ゴール裏に乗り込んできた事案があったんですが、そういう感じのことを思いながら心を沈めました。あの若者たち、元気かな……。
水平社運動で名を挙げたのは昔の話、平塚雷鳥は平等主義から脱却して「頂を目指す」とのことです。「解放」から「権利」の獲得へ、「第2次●●イズム」の流れにはよくあることです。
日本のキャプテンをSEE OFF
大分のMF28坂井大将が5月2日、「FIFA U-20ワールドカップ2017」(5月21日~6月12日)の日本代表メンバーに選ばれました。順当といえば順当な選出ですが、決まってみるとやっぱりうれしいものです。
(大ちゃんへの思いは上に書きました。いつもより短いので読んでいただけるとうれしいです。)
U-20W杯に向けた直前合宿が11日に始まるので、ホームゲームはこれが最後。みんなで「お見送り」をしてあげなければなりません。
試合前にはセレモニーがあり、ゴール裏からは「青き誇りを胸に世界で輝け」という横断幕が出ていました。モニターには笑顔も映され、「いよいよだな」という雰囲気です。
また、落選となった岩田智輝、吉平翼の個人幕とともに、「2020の主役を奪え」というメッセージも。彼らにとってはここからが始まり。応援してくれる人はたくさんいるから、まだまだ先の長いサッカー人生を実りあるものにしてほしいです。がんばれ!
フォーメーション
大分はいつもの[3-4-2-1]。不調に加えて落選ショックもあるだろうDF29岩田智輝に代えて、MF14岸田翔平が右ウイングバックに入っています。その他は前節・京都戦と同じメンバーですが、細かいところで言うとFW9後藤優介とFW20小手川宏基が左右を入れ替わっていました。
松本もおなじみの[3-4-2-1]。電柱かと思いきやスピードとパワーで圧倒的なカウンター専用機になれるFW9高崎寛之と、MF15宮阪政樹、DF3田中隼磨らロングボール精度の高い選手を併用しているのは脅威です。
MF8セルジーニョは今季から加入。いまいちプレースタイルは分かりませんでしたが、バネがあってボールタッチが雑な後藤優介という雰囲気でした。おっさん、MF20石原崇兆、MF5岩間雄大などJ2でこいつ居るのは嫌だな……感のある選手も並びます。
大分もだいぶ戦術がまとまってきたため、選手の陣形移動もこなれてきて、「ミラーゲームが苦手」という感覚はなさそうです。ただ、前線の選手を中心にイーブンな体勢でのマンツーマンでは劣るため、マンツーマンに強みがある松本がどうやって噛み合わせていくかは注目されます。
試合
序盤から大分ペース。前からプレスを来る松本の攻撃陣を手軽にいなし、自由にボールを動かします。これは幸先が良い。最後に勝利した湘南戦のようなかみ合わせになっていました。
大分の狙いどころは自らの急所と同じ、ストッパーとウイングバックの間。FW9後藤のドリブルからマイナスのクロスでMF16山岸、中盤で入れ替わったMF48川西翔太からFW9後藤と、的確な狙いでゴール前のプレー機会を積み上げます。
一方、松本も黙っているわけではありません。左サイドから大外に入ったクロスをDF3田中が頭で合わせた場面、右を突破したMF10工藤浩平のクロスが跳ね返されるもこぼれ球をDF31橋内優也がダイレクトで打った場面と、大分ゴールを脅かします。
とはいえ、ここで気になったのはクロスの方向。大分は斜め気味のクロスを苦手としているのを反町監督も分かっているはず。それなのに、サイドをえぐった状態から直角に上げてくるボールばかりで、屈強な大分3バックの前には全く効果がありませんでした。あれ?スカウティングされてない?
主導権を握っていたのは大分でしたが、最初の決定機は松本。
15分、MF15宮阪の何でもない縦ポンにFW9高崎が高い打点のヘッドで反応。落としたところに走り込んだMF10工藤がダイレクトでボレーシュートを放ちますが、ゴール上に外れました。これは危ない。
大分の最終ラインはボールに対しては強いですが、人の動きに弱いことがこのプレーからも伝わってきます。最初のFW9高崎についていけなかったのはもちろん、セカンドボールをMF10工藤に通してしまったのはかなりまずい対応でした。
その後も、大分は中盤であたふたしたシーンが続きます。きっちりと寄せてくるが空転はしないミス待ちの松本に対し、ちょっとびびってしまったような形になりました。
ところが40分、大分にも良い形が生まれます。パスカットをしたDF6福森直也が出しどころを失い、ドリブル突破を試みてスイッチオン。思いのほか深く持ち上がって、ようやく出てきたパスをダイレクトで打ったFW9後藤のシュートは防がれましたが、拾ったMF14岸田がボレーで狙いました。惜しい。
直後の42分には決定機。左サイドをMF16山岸智がダブルタッチで2人を交わしてドリブル突破(すごかった)し、マイナス気味のクロスはFW9後藤へ。シュートはまたしても阻まれますが、ここで松本DF31橋内がトラップミス。こぼれたところは再び岸田。左足で狙いましたが、またしても外れました。
まずはなによりMF16山岸のドリブル突破、クロスの精度が素晴らしかったです。ドリブルは必ず前方への推進力となり、不思議なくらいにクロスがブロックされません。また、MF14岸田はきちんと中央にしぼっているまでは良い動き出しでした。
松本は45分、ゴール前でMF8セルジーニョがボールを受けてシュートを試みるもブロックされ、拾ったDF3田中のクロスも阻まれました。これで前半終了。0-0のまま折り返します。相手の監督を考えると嫌な終わり方だ……。
後半もわりかし大分ペース。MF48川西の機動力とボールタッチを生かし、どんどん前方にボールを進めます。FW出身なのにこれほどゲームメーカーっぽい働きができるのもすごいです。
最初の決定機は大分。左サイドでのスローインからボールを受けたFW18伊佐耕平が相手DFを振り切りながらカットイン。そのまま放った強烈なシュートはクロスバーに当たってゴールイン!大分サポーターから「SEE OFF」のチャントが歌われ……
……るかと思われましたが、判定はノーゴール。疑惑のジャッジでした。2012年J2最終節といい、松本戦には幻のゴールが付きものなのでしょうか。
(これ、入ってるよね……?)
ともあれ、あのシュートスピードでオフサイドラインを見ながらゴール判定するのは無理でしょう。
自動でラインを割ったかどうか判断してくれるゴールラインテクノロジーの導入にはお金がかかります。そこで、ゴールライン内をネズミ取りにするなどの次善策が求められます。エンターテイメント性も高いので悪くないと思いますが、貧乏ってつらいですね。(むしろ発想が貧困)
55分、松本ベンチが最初に動きます。MF8セルジーニョに代えてMF14パウリーニョを投入。栃木時代の嫌な思い出が蘇ってきます。後ろ目のボランチだったMF15宮阪が右シャドーに入り、MF14パウリーニョが前目のボランチ。相方のMF5岩間が下がって組み立てを担います。
63分には大分が再びチャンス。FW18伊佐のボレーシュートは相手の手に当たるがノーファウル、こぼれたボールをMF48川西がミドルで狙います。ハンドを取ってもらえなかたのは残念でしたが、コーナーキックを得られました。64分にもFW20小手川を起点としたカウンターからFW18伊佐が狙いますが惜しくも外れました。
大分は68分、MF16山岸に代えてFW17國分伸太郎。松本はFW9高崎を中心にゴール前に侵入するところまでは行きますが、ものにすることはできず。FW9高崎は76分、FW11三島康平と交代しました。今度こそ正真正銘の電柱系だ!(しかし顔はとても端正なイケメン)
77分、大分はMF33鈴木惇に代えてMF24姫野宥弥を投入。MF33鈴木惇はカウンターを受ける際の機動力に難があるため、悪くない交代だと思いました。
ところが直後、自陣深くでボールを持ったMF24姫野のバックパスから最大のピンチを迎えます。近くでボールを受けるはずだったDF4竹内彬が足をすべらせ、そのままボールをSEE OFF。
持ち主を失ったボールを拾った松本FW11三島が、ドリブル突破でGKと1対1となり、右足シュートで先制して松本サポーターがSEE OFFを歌い……と誰もが思ったでしょうが、無情にも左へ外れて行きました。命拾いしました。
一瞬は落胆した松本サポーターですが、ここからはイケイケムード。「どんな時も俺たちはここに居る~♪(……)山雅が好きだから~♪」と歌い始めましたが、普通に試合が終わったら帰ってくれと思いました。
大分はFW20小手川に代えて日本の大将MF28坂井をピッチへ。松本はMF10工藤→FW19山本大貴でもう前に進むだけです。
後から入ってきた松本の2人は反町監督に指示を受けたのか、プレスに行くときに選手のくせを見破っていた雰囲気がありました。具体的には「大分のDFがフェイントを入れずにパスを出そうとするときはだいたいバックパス」という感じです。私もさっき気付いたんですけど、これちょっと単純すぎるな……。
大分は相変わらず斜めのパスを多用して崩しにかかります。86分、引いてきたFW18伊佐からFW9後藤に縦パスが通り、サイドのMF14岸田に落とす流れなんかは良かったです。FW18伊佐がいると前線に張り出して相手の最終ラインを下げられるので、斜めのパスが有効に使えるようになります。
松本のハイライトは90分、左サイドで複数人が関わって、MF20石原が右に切り替えしてアーリー気味のクロス。「ようやく出た!これが大分の失点パターン!(どっちの味方なんだ)」……と思いましたが、楽々競り勝ったFW11三島のシュートはGK21上福元直人がキャッチしました。
結局、松本が同様の形で放り込んできたのは、試合を通じて1本だけでした。ラッキー。そのまま試合終了。大分は今季初めてのスコアレスドローとなりました。せっかく応援歌でドロドロしてるのにどっちもSEE OFF歌ってねえ!
まとめ
個人的には「反町っぽさ」に大分がどうやって対応するのかに興味があって見ていましたが、松本がそれほど変わったことをしてくるわけでもなく、大分の普段のサッカーをそのまま出せた結果かなと思います。
やっぱり過密日程で体力的に厳しいのと同じように、嫌らしさも消耗するものなのでしょうか。DAZNでハイライトを見ていたときに、ちょっと疲れの出た顔をしていた気がします。(スーツだったからかもしれない)
また、試合後には大分サポーターから審判団にブーイングが浴びせられましたが、ゴールに関するジャッジだけでなく、FW18伊佐への松本のマークなど不安定な判定が続いていたので、ある程度はやむを得ないのかなと思いました。(「あっ、なんとか警察事案だ……」とちょっとドキドキしたのは認めます)
しかし、勝ちたかったですね……。(なんか釈然としないまとめ)
ひとまず、行ってらっしゃい!落選した人のぶんまでがんばってきてください。(まあ、韓国には私も行きますが)