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たぶんサッカーの話が多いです。

【J2第7節 山形×大分】だんだん引き出しがなくなっているの出羽?

山形に行ってきました。なぜか4月の東北で17時キックオフという鬼の日程だったのでとても寒かったです。そういえば院生時代に「秋春制」に関する山形新聞の記事を分析していたことを思い出しました。無理!

早起き、トラブル、クラゲの三本立てでお送りする旅行記はこちら。

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NDソフトスタジアム

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世は専用スタジアム建設が大ブームですが、私は日本にどこでもあるような「国体型スタジアム」が好きです。

だだっぴろい陸上トラックにちょっと寂しめな客席ハーフライン付近の聖火台申し訳程度の貴賓席。微妙にそれぞれの個性を出してきますし、どこを取っても趣深いと思います。「何十年かに一回、義務的に税金で作られる」という公共事業感もまた一興です。

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山形といえば「炎のカリーパン」。対戦チームの名物がカレーパンに入って出されます。大分からは、椎茸、温泉まんじゅう、唐揚げ、とり天、やせうま(極太麺にきなこをまぶしたもの)が入っていました。ひとまず全部、食べました。

あとは寒かったのでもつ煮も食べました。味が加えられるのが良かったです。辛味噌的なものを大量に投入しました。

そのまま入場します。

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日曜夕方ということでサポーターは少なめ。しかしながら、山形サポーターのチャントが地味に良いんです。

「われらの誇りを歴史に刻め」の歌詞で知られる「サタデー・イン・ザ・パーク」をはじめ、「オーバー・ザ・レインボー」「夢見るシャンソン人形」「恋のバカンス」という古今東西の名曲に、仙台との張り合い感あふれる新しめの邦ロック曲も多くあって、聞いていてまったく飽きません。

あと「山形!ディオ!」のコールが「山形あきお」に聞こえるという話題も前に見た気がします。正直そうとしか聞こえなくなります。「REAL TOHOKU」の横断幕は「大分帝国」感あって好き。

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大分のサポーターもかなり少なめ。アウェイ遠征組は多いほうですが、さすがに日曜夕方は厳しかったか。山形とチームカラーが似ていて紛らわしいのですが、メインスタンドにもいくらか来ていたようでした。

フォーメーション

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大分は前節から一人を変更。左サイドバックに入っていたDF3黒木恭平MF16山岸智に代えました。これでピッチ上の左利きはMF33鈴木惇のみ。詳しくは後述しますが、これは悪手だと感じています。

山形は父・康仁氏がGKコーチを務めていた関係で、大分ジュニア育ちのMF10鈴木雄斗が右ウイングバックGK1児玉剛FW9瀬沼優司など、木山隆之監督が前任地の愛媛から連れてきた選手も並んでいます。

DF20茂木力也は2013年U-17W杯の吉武ジャパン世代。FW25汰木康也はMF10鈴木と同じで横浜FMユースからトップ昇格することなく、そのまま他クラブに新加入したという共通点があります。山形らしく美男子です。

この並びを見る限り、左で抜いて右で決めるという狙いが読み取れます。左サイドは突破力のある選手を置いて、右サイドには中央ポジションを経験してきた人が多くなっています。そんな非対称性を補うかのごとく、左ボランチに元日本代表MF14本田拓也が入っているのもニクいです。

いろんな意味で寒かった試合

いつもの前半だが早々に失点

今季の大分トリニータは前半に相手の出方をうかがうあまり、運動性(インテンシティ?)の少ない立ち上がりになることが少なくありません。今節も例に漏れずといった形になってしまいましたが、異なったのは失点時間くらいでしょうか。

山形は4分、左後方から右サイド深くのFW9瀬沼にロングボールを配給。相手DF5鈴木義宜に競り勝って胸で収め、オーバーラップしてきたDF20茂木に落とします。DF20茂木のダイレクトクロスは相手DF4竹内彬にクリアされますが、セカンドボールに走り込んだFW9瀬沼が左足を振り切ってファーに叩き込んで先制です

大分の守備陣はこれまでの試合で、左右の動きに難があり、クロス対応のミスによる失点が多いことが明らかになっていました。したがって、FW9瀬沼を右サイドで起用したことも含めて、狙いどおりの得点だと考えられます。

組み立てに新たな試行も

この試合では攻撃時に、これまでセンターバックの間に入っていたボランチの2人が、左サイドバックの位置に入って組み立てに参加していました。前節・愛媛戦で見られた「3バックの誰からもボールが出ない」ことを受けたものでしょうか。キック精度のある選手を置いて、明確な「砲台」ができた形になりました。

もっとも、これは左ストッパーに入ったDF5鈴木義の弱点を補う狙いもあるのだと思います。3バックのサイドというものは、保持するボールをボランチorウイングバックに流すか前線にロングボールを蹴ることで、プレスをいなす役割が必要とされます。

ところがDF5鈴木義は左足でボールを扱うことはほとんどなく、相手のプレスを正面から受けるような形になります。もちろん、左足でロングボールを蹴ることもありません。左利きのDF6福森直也がコンディションを崩している影響もあるのでしょうが、左に置くには明確な問題が出てきています。

この試合では前述のように、左深くに拠点を作ってプレスを分散させ、一列前のMF16山岸が応急処置をしていました。MF16山岸は29分にFW27三平和司にツータッチで縦パスを出したシーン、34分に詰まってドリブルで抜け出しFKを獲得した場面などは「さすが」という感じです。

ただ、前半は風下だったこともあり、ボランチの2人が砲台としての機能を果たすこともありませんでした。あとはDF29岩田智輝がもっと裏に走るような動きがあれば中盤にスペースができるのに……と思いますが、そう考えるとつくづくMF7松本怜の不在が痛いです。

停滞した展開だがビハインド広がる

大分の前線にも目立った動きがなかったことで落ち着いた試合展開になりましたが、山形は決定機を重ねます。

37分、DF27高木利弥からのアーリー気味のクロスに、FW11阪野豊史がニアに走りながらヘディング。40分には、左からの展開で中央気味に入っていたDF20茂木の縦パスにFW11阪野がワンタッチで縦にスルーパス、MF10鈴木が走り込んだところに飛び込んだ相手GK21上福元直人が足を引っ掛けてPKとなります。

PKは倒されたMF10鈴木が左に決めて2-0。これも「左で作って右で決める」という流れになりました。対人戦の要素が大きいアバウトなボールには屈強な大分守備陣も対応できていましたが、「いったん下げられてから潰しに行く」といった動きは乏しいのが気になるところです。前半はそのまま終了。

前線にダイナミズムが出てきた後半

大分のハーフタイム修正がどういうものだったのか詳しくは分かりませんが、3人が大きな動きで中盤に降りてくるシーンが多くなったように感じました。

山形のスリートップは前半から、近い距離で攻撃をしたかと思えば、[5-4-1]の守備ではサイドまでしっかりプレスバックするという献身性が目に付きました。大分の前線が見習って走り回るような形とはいきませんでしたが、単に裏に走るだけでない崩し方を狙い始めたようです。

それが生きたのは57分、セットプレーで押し込んだ流れから、DF4竹内のパスを受けたMF20小手川宏基が左前方にダイレクトパス。低い位置で受けたFW9後藤優介がドリブルで持ち上がり、推定30メートル強のエリアからアウトに掛けたミドルシュートを叩き込みました

飛び道具で殴った形なので、采配が生きたというよりは、さすがエースといった感じなのですが、ここで追い付いたのは大きかったです。実際、その勢いのままに62分、左サイドで長い距離を突破したMF16山岸が、引いた位置から並走してきたFW27三平に横パス。綺麗なトラップで収めて、FW27三平が右足でニアを打ち抜きました。あっという間の同点劇でした。

[4-4-2]でさらなる押し上げを狙う

大分は得点直後、ビハインド時から準備していた交替を挙行。2点目の殊勲者であるMF16山岸とFW27三平を下げ、MF17國分伸太郎と昨季まで山形に所属していたFW48川西翔太を投入します。

ここでフォーメーションは[4-4-2]に。FW9後藤とFW11林容平のツートップ、中盤は左からMF20小手川、MF33鈴木惇、MF48川西、MF17國分、最終ラインはDF14岸田翔平が左に回って、DF5鈴木義、DF4竹内、DF29岩田の並びになりました。

これで相手の[5-4-1]に対して、フォーメーションを変化させなくても、最終ラインから落ち着いてボールを持つことができるようになります。一方、意外とDF14岸田がFW9瀬沼を相手にも戦えていて、ますますなぜDF5鈴木義が左なんだという気持ちが沸いてきます……。

山形はMF2瀬川和樹→MF6山田拓巳の交替。右ウイングバックに回して、MF10鈴木が左に入ります。ちょっと意図が分かりませんでしたが、疲れもあったのでしょうか。もっとも71分には、MF10鈴木の左からの右足クロスにファーでFW9瀬沼が合わせる狙いどおりの決定機はありました。

大分の最大の決定機は75分、DF4竹内の縦パスに引いてきたFW9後藤が綺麗に受けて、おなじみの柔らかターン。前を向いて抜け出したFW11林にスルーパスを通しましたが、シュートはGKに当たってしまいます。ディフレクションはゴールに向かいましたが、これは相手DF27高木がオーバーヘッド気味のスーパークリア。オフサイドを取れなかった失敗を取り戻す自作自演感あふれる好プレーでした。

山形も布陣変更で応対、そして勝ち越しへ

山形は78分、FW25汰木→MF8風間宏希。ツートップにして相手守備陣とのかみ合わせを良くして、アンカーをMF14本田に担わせて中盤に厚みを作ります。個人能力の高い選手がいると、こういうことができるのは強いですね。

押し込んでいた大分でしたが、相手の布陣変更を機にはめ込まれ、思うようにボールがキープできません。84分にFW11林→FW18伊佐耕平で前線に起点を作れるよう試みますが、均衡を破ったのは山形でした。

85分、ボールを持つ大分DF4竹内を囲んで奪ったところから、投入したばかりのMF8風間がアーリークロス。中央で待ち構えていたFW11阪野が胸トラップから右足に持ち直し、ハーフボレーで流し込みました。相手の出方に合わせた采配が生きた貴重な3点目です。しかし、またクロスからの失点ですね……。

90分、MF17中村→MF7松岡亮輔で締めにかかる山形に対し、左右にボールをつないで崩そうと試みる大分でしたが、試合はそのまま終了。昇格した2012年アウェイ戦を思わせる2-3で敗れました。(とっても縁起がいいですね~~~)

 

良かったところ

・マイナーチェンジで2点を追い付いた

やっぱり個人技のすごい選手はすごい。(トートロジー

でもそうとしか言いようがない気がします。とにかくFW9後藤のシュートはスペシャルでしたし、MF16山岸のドリブルもFW27三平のトラップもさすがでした。

 

悪かったところ

・立ち上がりの死んだふり作戦

もともと相手の弱点を突くようなサッカーをしていないのに、前半に相手をうかがうような真似をしても仕方がないと思います。素直に当初の予定どおり、筋肉と勢いでぶち破りたいところです。

・選手層の薄さによる用兵不足

流れを変えたい後半の時間帯で使える選手がいないといった問題が出てきています。MF16山岸やFW27三平といった軸となる選手が退いた状態で、チームに馴染んでいるとは言い難いMF17國分やMF48川西といった選手が出てくるのは、あまり良い状況とは言えません。

もっともDF6福森直也、MF7松本怜、MF15清本拓己の3人がいないのは痛いです。ぶっちゃけ普通にやれば先発濃厚の3人が欠けてしまえば、どういうチームでも厳しいと思います。(諦めるわけではないですが)

・引き出しがないのではないか問題

ここまで負けた相手はロティーナ監督の東京ヴェルディ、ロドリゲス監督の徳島ヴォルティス木山隆之監督のモンテディオ山形。どこも指揮官の評価が高いチームです。

こちらの片野坂知宏監督はまだ2年目。まだまだ発展途上の人だと思いますので、能力に言及するのはちょっと違うと思いますが、明確な弱点を突かれた失点が多いのは気にかかります。

サッカーは常に思い通りのパスコースやフォーメーションが保てるわけではありません。もともと資金規模が小さい大分トリニータにあり、負傷者で選手層が薄くなっているならなおのこと、「相手の弱点を突く」「手前の弱点をふさぐ」ことへの意識が大切になってくると思います。

ひとまずクロス対応、停滞時の組み立て、前線3人以外を使った崩しなどは、狙いと狙われどころを明確に意識していきたいところです。チェルシーだって、ユベントスだって、ここは必ずやっています。(出羽守だけに)

 

まとめ

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感動の再会。

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なぜwwww

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日曜夜に無理やり組まれた試合ということで、DAZNのカメラがたくさんいました。総勢16台で大分トリニータの敗戦シーンを映してもらえて光栄です。

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翌日は天童温泉に入って帰りました。月曜日の昼間だったので貸し切りでした。