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たぶんサッカーの話が多いです。

「そっとしてほしい」けど「ぜひ見てほしい」というジレンマ ― 『アジア』に臨むU-16代表が発表

AFC U-16選手権(インド)に臨む日本代表メンバーが2日、発表された。

この大会でベスト4以上の成績を残せば、来年5月に開かれるU-17ワールドカップ(インド)への出場権が獲得できる大舞台。前回大会はベスト8で出場権を逃しており、是が非でも勝ちたい大会となる。

メンバーは以下の通り。

GK
12 青木 心(JFAアカデミー福島U18)
23 大内 一生(横浜FCユース
1 谷 晃生(G大阪ユース

DF
21 作田 龍太郎(神戸U-18)
19 菊地 健太(JFAアカデミー福島U18)
16 監物 拓歩(清水ユース)
5 瀬古 歩夢(C大阪U-18
7 菅原 由勢(名古屋U18)
3 小林 友希(神戸U-18)
20 関川 郁万(流経大柏高)
2 桂 陸人(広島ユース)

MF
4 平川 怜(FC東京U-18
8 鈴木 冬一(C大阪U-18
10 福岡 慎平(京都U-18)
6 喜田 陽(C大阪U-18
15 上月 壮一郎(京都U-18)
17 瀬畠 義成(JFAアカデミー福島U18)
22 谷本 駿介(C大阪U-18

FW
18 山田 寛人(C大阪U-18
11 宮代 大聖(川崎F.U-18)
14 棚橋 尭士(横浜FMユース
13 中村 敬斗(三菱養和SCユース
9 久保 建英(FC東京U-18

 

 注目選手というべきか、このチームを語るうえで外せないのが、1歳下にして堂々のエースに君臨する久保建英。「バルセロナ」という肩書が独り歩きしている感もあるが、FC東京U-18での活躍から実力も徐々に知られつつある選手だ。

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スター不足で情報過多の日本サッカー界において、ある種「触れにくい」存在であるのは間違いない。実績は折り紙付きだが高度なポゼッション志向に賛否のある「バルセロナ」、それもテクニカルな中心選手を数々と輩出してきた「カンテラ」出身とあり、彼が掲げている看板の批評性は唯一無二のもの。メディアが見出しに使えば「数字を持っている男」であり、それゆえ彼を推すメディアは「アクセス乞食」といった扱いを受けることも少なくない。

それでも彼はまだ、中学3年生の15歳。これからどのようなサッカー人生を歩んでいくかの岐路にある。プロ選手ではないため、インタビューなどでパーソナリティーが明らかになることは少ない。そのせいか、ネット上では真偽が定かでない下世話な噂が飛び交い、一挙手一投足が脚色されて拡散されるような場面も見受けられる。

関心、期待、嫉妬、好奇――。さまざまな目が向けられていながら、表だって語ることには遠慮が付きまとう。そのような絶妙なポジションに立たされている。

 

この大会で彼は「日本のサッカー選手」として本格的なデビューをする。

試合はテレ朝チャンネルで生中継されるため、熱心なサッカーファンは目にすることだろう。翌日の朝には全国ニュースにも取り上げられることだろう。そこでは常に「バルセロナ」が付きまとうかもしれない。日本の試合でなく久保建英個人がクローズアップされることになるかもしれない。

それでも今大会は、看板ではなく映像で実力を見せつける機会でもある。むろん左利きのドリブラーという個性からバルセロナの象徴に紐づけられ、名前に系統を示す数字が付いてしまうことは想定される。ただし、彼がそれだけの選手ではないと広く知られることも期待できる。小柄で細身ながら決して簡単には倒れないボディバランス、奪われてもすぐにボールを取り返す守備意識、年長者に混じっても堂々と振舞えるリーダー性、一流の資質は細部にも宿る。

いずれにせよ、ここで「目立つ」ことは免れない。「そっとしておいてあげてほしい」という思いもあるが、世間はそれを許してくれないだろう。それならば、せめて「しっかり見てあげてほしい」と思う。「目立つ」を「語る」前に、プレーをしっかりと見てほしい。それが彼を「サッカー選手」として評価することにつながるし、同時に彼を偉大な看板から解放することになるだろう。そのような「スターシステム」の思慮ある再構成こそが、未来の日本サッカーを担う才能の正しい育て方なのではないかと考える。

 

余談だが、本来なら「スター」とされていたであろう選手が、久保のおかげでプレッシャーを受けずに済む側面もあるはずだ。そのためあえて名前を挙げることはしないが、センターラインを中心に注目しておきたい。