Cateblo.jp

たぶんサッカーの話が多いです。

格差社会と一発勝負 ― EURO2016 Round16 Day2

せっかくの休日なのにうまく眠ることができず、眠気マネジメントに失敗したまま試合に入ってしまったトーナメント2日目。すべての試合で前半の早い時間にスコアが動いてくれたため寝落ちは避けられたが、月曜日から圧倒的な寝不足に苦しむことが決定的となった。それにしてもド派手な多点試合を期待しているわけではないのだが、試合に不均衡が出たほうが分かりやすい試合になるからやはりありがたい。まだこの時点ではちょっとした戦力差が目立つので、ジリジリとうかがい合うような試合はもう少し先で良い気がする。強者側が試合を殺すなんてもってのほかだ!(なお明日には手のひらを返す予定)

 

・フランス×アイルランド

開始直後にペナルティーエリア内でポグバがロングを倒してしまい、アイルランドがPKゲット。ブレイディーが右隅にしっかり決めて、開催国が早々にビハインドとなってしまった。それでも後半にグリーズマンが爆発。サニャからのクロスを頭で決めれば、数分後にジルーの落としを落ち着いて沈め、一人で試合をひっくり返した。そのまま2-1でゲームセット。開催国フランスがベスト8に歩を進めた。

フランスは[4-1-4-1]2列目の4人が頻繁にポジションチェンジを繰り返し、相手の中盤をかく乱し続ける攻撃スタイル。得意不得意が多そうなメンツなのにかき回しすぎるのもどうかと思ったが、アイルランドの運動量が極端に落ちていったところをみると、作戦は成功だったと言わざるをえない。もっともハリルホジッチが言っていたようにポジションチェンジの途中に中央に滞留しやすい傾向もあり、狙いを絞って奪われればサイドの裏を使われ放題になるだろうと感じた。

アイルランドは序盤こそハイテンションに上下動を繰り返していたが、逆転された直後にダフィーが得点機会阻止による退場で終戦。最終盤はゆるい動きばかりで決定的なシーンを作ることはできなかった。パワープレーも迫力不足でこのあたりのステージが限界だったと思われる。

フランスはカンテとラミが次の試合で出場停止。おそらくイングランド戦になると思われるがここが初めての正念場だろう。また、朕はEUの盟主たいとばかりにオランド大統領が観戦に来ていたが、とても悪い顔をしたベニテスって感じで心象が悪かった。アナウンサーが「各国首脳はサッカーが好きなんですね」と言っていたけど、普通に国民に対する得点稼ぎだと思われる……。心象が悪いと言えばジニャクが超相変わらずだった。

 

・ドイツ×スロバキア

序盤にCKのセカンドボールに反応したボアテングの代表初得点(っぽくない!)ミドルで先制したドイツは、ドラクスラーの突破からごっつぁんゴメスのプッシュ、そしてドラクスラーの高角度開脚ボレーで危なげない3-0勝利。グループリーグに続いての無失点というだけでなく、攻撃のリズムも徐々に向上しているようだ。ついでにエジルがPKを止められた。ファンタジーサッカーが……。

ドイツはユースを過ごしたシャルケからボルフスブルクに移籍した地味ヒールのドラクスラーがとても良かった。得意のドリブル突破はもちろんだが、フリーランでも受けやすい場所を保っていた。チームとしてはグループステージと比較して、前プレスがパワーアップしていたように感じた。またレーブ監督はグループステージ3戦目こそ開襟シャツだったのに、この試合では再びVネックシャツに戻っていた。勝利のジンクスなのか。

スロバキアは前半に完全な停滞感に陥ってしまい、後半から中央を固める布陣に変えてから動きが良くなった。といってもモヒカンをさらに剃って臨んだと思われるハムシクが組み立てに参加するため、ドイツの屈強なCBを破れるような選手が前線にいなかった。ハムシクはアナウンサーから「スロバキアのメッシ」と呼ばれていたけど、世界一有名な「○○のメッシ」かもしれない!と思った。またもはや利き足もよく分からないような人だし、ドリブルが細かい印象すらなかったので、普通にその呼び名が正しいのかどうかは疑問。

放送スタッフつながりでいえば、宮本恒靖解説員はスイス戦とかドイツ戦とか、現役でプレーしたオーストリアから微妙に外されてキャスティングされているので軽く同情した。スイス戦のときはスイスでプレーしたことにされていた。それは中田浩二です。

 

ハンガリー×ベルギー

序盤にデ・ブライネのFKからアルデルヴァイレルトの頭でベルギーが先制。後半にアザールのクロスから途中出場のバチュアイ、そしてアザールのご褒美ドリブルシュートで一気に2点を追加し、アディショナルタイムにはカラスコのゴールでダメ押し。ベルギーが4-0で勝利した。前半はわりとしっかりベルギーが攻めていたけど、後半は小規模カウンター合戦と化した。ベルギーはしっかり決めるところを決めた一方で、ハンガリーにも半決定機はいくつもあったなかいずれも精度が足りずに結実せず。

ベルギーはアザールがキレキレ。いつでもどこでもドリブル突破が第一の選択肢になっているようで、得意のクネクネドリブルを延々と繰り出していた。鋭いプレーはデ・ブライネやヴィツェルのほうが多かった気がするがこればかりは結果を出した者勝ち。チームとしてもこのくらいのレベルの相手に対しては切れ味鋭いカウンターを見せることができるらしく、それを踏まえて格下相手ながらも持たせるサッカーを試みているのは今後に期待させられる。

ハンガリーは元フラムのゲラがハーフタイムで途中交代。まったく動けなかった。その時点からあまり興味がなくなってベルギーを中心に見ていたが、右MFのジュジャークと左SBのカダールは気になった。基本的にほぼすべての選手が対人能力に欠ける感じなので、個人技しかないベルギー相手は食い合せが悪かったのかもしれない。また土木作業員風のトレーニングパンツ(ほぼスウェット)に下半身を包んだGKはEURO最年長出場記録を作って夢舞台を去った。

 

中堅国同士で潰し合いをする展開が続いた1日目、格差のある対戦が並んだせいか戦略の対立軸がはっきりした2日目。後者のほうが見どころは多かったが、16チーム勝ち抜けの新制度では前者の展開が多くなるのもやむを得ないのが難しいところ。3日目はスペイン×イタリア、イングランド×アイスランドと戦力差が異なる2試合。前回大会の決勝カードとトーナメント最大戦力差といった形で、好対照になれば飽きずに見られるだろうか。ひとまずおやすみなさい。