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たぶんサッカーの話が多いです。

大分県サッカー選手権ベスト4雑感

大分県も選手権ベスト4が決まりました。

 

大分、大分西、柳ケ浦は組み合わせを考えるといずれも「順当」な結果。スコアで判断すれば僅差で競り勝ったように見える試合もあったが、ここまではどの試合も力の差が明らかだった。

 

優勝候補筆頭の大分は「下部組織」の大分中学校からエスカレーターで上がってきたエリート1、2年生と、中体連や街クラブなど多様な背景を持つ雑草系3年生が混じったハイブリッドなチーム。中高一貫校が全国的に安泰でない現状を考えると、個性が混在する今年のうちに成功体験がほしいところ。
ここまでは全ての試合でハーフコートゲームを繰り広げながらも、前線の2年生軍団が見せる「きれいな崩し」がほとんど決まらず。5回の決定機でようやく1点といった現状で、準々決勝・大分工戦もPKによる1点にとどまった。
もっとも、負ける姿が想像できないのも事実。攻撃面の不安はありながらも、3試合連続無失点の守備陣はすばらしい安定感を見せている。GK箱田や主将のDF下田を中心にセーフティーな判断と途切れない集中力は目を見張り、さすが厳しい指揮官に鍛えられたチームだという印象を受ける。
攻撃で見せる「余計な色気」は余力の裏返し。組み合わせにも恵まれ、ここまでの戦いで危機に直面することはなかったが、選手権がそんなに甘いもんじゃないのは彼らも承知のとおり。ここから本当の「イタコウ」が見られると期待する。

 

対抗馬は大分西。高偏差値の進学校ながら大分トリニータU-15、カティオーラFC、スマイス・セレソンHOYO大分U-15など大分市近郊のクラブチーム出身者が大半を占める。
3回戦・鶴崎工戦では1点リードの後半アディショナルタイムにパワープレーで失点も気持ちは折れず、延長後半に決まった1年生アタッカー宮崎のゴールで見事勝利。準々決勝・情報科学戦では1週間前の勢いを持続させているかのように前半からハイテンションな前のめりサッカーを展開。スピーディーな前線4枚が1点ずつを奪って、危なげなくベスト4進出を決めた。
このチームの特色は雰囲気の良さ。自由な校風の影響もあるのかとにかく全員が楽しそうだ。試合前のシュート練習から声がよく出ており、試合に向けてテンションを上げていくことが自然にできている。応援団も部員の多いチームに比べて人数こそ少ないが、CKで前線に上がってきたDF清塚のチャントを歌うなど、選手のモチベーションを上げるような工夫も見られる。
これまでは大分西特有の自由度の高さや明るいムードがプレーのゆるさにつながる場面も多く見られていたが、選手権では締まった試合ができるようになっているのも目立った進歩と言える。2年生のDF梅木やDF江藤で構成する若い守備陣が失点を最小限に抑えられれば、初の全国選手権出場も現実離れした話ではない。

 

県北地区と福岡県東部地区の選手が中心となる柳ケ浦は手堅く守って素早く攻めるという高校サッカーらしい堅守速攻スタイルが特色。飛んできたボールは守備陣がしっかりと跳ね返し、攻撃ではスピーディーなミドルパスとドリブル突破で効率よく試合を進める。
ここまで3試合で12得点を挙げたチームの攻撃の中心は最前線の長身FW松岡。高校生離れした身体を張って起点を作り、苦しい時間でも相手の陣形を下げられるのが強み。そうして中盤に空いたスペースには2列目の小兵MF3枚がガンガンしかける。全員がハイスピードながらボールを扱う技術も高く、1対1を恐れない闘争心を持ち合わせているのもスペシャル。
もっとも、このようなチームは守備陣の安定感があってこそ。昨年は絶対的エース小野田を擁して全国総体に出場したが、勝敗を分けたのは守備陣の安定感とセットプレーだった。今年のチームも全員が空中戦でしっかりした競り合いができるのは鍛錬の賜物か。10年ぶり2回目の選手権への切符を手にするためには、まずはしぶとく守り続けることがカギになる。

 

ベスト4唯一の番狂わせは古豪・大分鶴崎。3回戦で王者・中津東をPK戦で下した勢いそのままに、前任の三重野英人監督が指揮を執るタレント軍団・大分南も終了間際弾で撃破。昔のような華麗なパスワークは影を潜めるが、シンプルな狙いのもとで展開される組織的なサッカーでしぶとく闘える好チームになっている。
攻守の中心は2年生アンカーのMF後藤。一時は2点をリードした中津東戦では、序盤から素早くボールを受けてサイドに展開する後藤の動きに相手マンマークがほとんど対応できていなかった。飄々とした佇まいからは想像できないような球際のアプローチも秀逸。他にも10番を背負いながらリベロを務める主将DF阿部や、自由なポジション取りと単騎突破でカウンターの最前線となるMF長冨などレベルの高い選手も少なくない。
またベンチには全国トップクラスであろう逸材も座る。大分鶴崎の試合が始まるとたちまち「そこ間のスペース埋めろ!」「この時間気をつけよう!」と高い声が響き渡り、「あれ?今年のコーチは試合中に喋るのか!?」と思ったが、その声の主は控え選手だった。
ときおりGKのような具体的な指示を出しているかと思えば、苦しい時間帯には背中を押すような掛け声も。0-0で迎えた押され気味の試合終盤には、ハイテンション極まって「苦しいけど前半もう少しがんばろう!……あっ、後半だったけど!間違えたけど!でも取ろう!」と軽く取り乱し、ピッチ上の選手から笑いが漏れていたのも良かった。(※ちなみにすぐ後に先制点が入ったのがすごい)
サッカーの実力ではピッチに立てない選手が自分の個性を発揮する場所を見つけ出し、他の誰にもできないような活躍ができるのも高校サッカー。なかなかここまで振り切ったことをする選手は見たことなかったが、それができるメンタリティーを心から尊敬します。でもそんなMF湯浅のプレーもいつか見てみたい。

 

準決勝は11月7日。だいぎんサブA。
10:00~ 大分×柳ケ浦
12:30~ 大分西×大分鶴崎
私は東京に緊急日帰り旅行中のため行くことはできませんが、熱い試合が繰り広げられることを願っています。