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たぶんサッカーの話が多いです。

高円宮杯プレミアリーグWEST 大分トリニータU-18×ヴィッセル神戸U-18(15.09.06)

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まさかの別府市は実相寺開催。芝に厳しい選手がいることで有名な名古屋のトップチームがキャンプに来たこともあり、良質の天然芝ピッチが特長のグラウンドだが、近隣に野球場や県立高校があるため駐車場の奪い合いが激しく、到着するまでにかなり疲弊した。

2位の大分は前日の試合でC大阪が敗れたため、この試合に引き分け以上で首位に立つ重要な1戦。相手は前半戦のアウェイゲームで敗れた神戸。リベンジを遂げて頂点に近づきたい。わざわざ別府まで来てくださったガチな感じの神戸サポーターは2名。本場の「コウベッ!」が聞けて感無量だった。

 

メンバー

大分トリニータU-18

GK 1 真木晃平(ハジャスFC/岡山県)②
DF 3 戸高航汰(大分U-15/大分県)②
DF 4 中畑雄太(別府FCミネルバ大分県)②
DF 14 宮原太一(大分U-15/大分県)③
DF 27 吉平駿(大分U-15/大分県)③
MF 5 江頭一輝(クレフィオFC/山口県)③
MF 7 鷺原拓也(サウーディFC/岡山県)③
MF 8 浅原直弥(大分U-15/大分県)③
MF 10 宮地裕二郎(大分U-15/長崎県)③
MF 26 酒井将輝(FCKマリーゴールド天草/熊本県)①
FW 13 岡将大(大分U-15/大分県)③
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GK 16 谷井悠也(FCリフォルマ/香川県)②
DF 28 脇田雄真(大分U-15/大分県)③
DF 37 横田白心(キックスFC/長崎県)①
MF 6 野尻陸生(大分U-15/大分県)③
MF 11 大串収亮(長崎ドリーム/長崎県)③
MF 20 野上拓哉(大分U-15/大分県)②
FW 22 小野原洸(鹿児島SC/鹿児島県)①

 

ヴィッセル神戸U-18

GK 21 鶴田海人(神戸伊丹U-15)②
DF 2 美馬和也(千里丘FC)③
DF 3 山川哲史(神戸U-15)③
DF 5 東隼也(神戸伊丹U-15)③
DF 15 白石健(スマイスセレソン大分県)②
MF 7 安井拓也(神戸U-15)②
MF 8 野田樹(神戸FC)②
MF 10 金田拓海(神戸U-15)③
MF 28 山本彩斗(千里丘FC)②
MF 44 中坂勇哉(神戸U-15)③
FW 13 向井章人(柏田SC)②
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GK 1 桐林海生(FCトッカーノ)③
DF 26 上田駿斗(神戸U-15)②
DF 36 前川智敬(神戸U-15)①
MF 18 佐々木大樹(レスポール浜田)①
MF 35 谷川勇磨(神戸U-15)①
FW 9 野原健太(那覇市立石田中)②
FW 27 升岡栄喜(神戸U-15)②

 

大分はU-18日本代表の中国遠征で大黒柱のMF28岩田智輝とエースのFW9吉平翼を欠く。補充は順当に普段の交代選手を入れた形。期待の1年生MF26酒井は火の国育ちの懐系オールラウンダー。転入してきて半年にして、国体選抜でも10番を背負っている。神戸は藤谷壮が不在。別府市出身のDF15白石は凱旋試合。大分のDF4中畑とは4種チーム時代の同級生となる。

 

フォーメーション

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大分は[4-2-3-1]。序盤はMF5江頭をアンカーにおいた[4-1-4-1]も多かったが、セットした守備をするならこっち。中盤を支配するMF28岩田がいないのでサイドを務めることの多いMF7鷺原がボランチに入り、最前線もできるMF8浅原が左サイド。左サイドの宮地が右に回って、FW9吉平翼の代役には2試合連続得点中のスーパーサブFW13岡。誰が出てきてもほどほどに安心できるのが今年のチームの特長か。

神戸は[4-4-1-1]のような形。最後に見たのは中学時代という選手がほとんどなので、普段のプレースタイルはよく知らない。最前線のMF7安井は神戸U-15時代にシャドーで攻撃の中心だった。このチームでは偽9番のような役割で、アタッカーとしての役割は両サイドハーフがこなす。FW44中坂は堂々のフリーマン。U-18日本代表で例えるなら南野拓実であり邦本宜裕。彼の出来次第で攻撃のクオリティーは決まる。欲を言えばガンバ門真出身のFW11永澤竜亮も見たかった。

 

試合

序盤は神戸が優位に立つ。[4-4]のツーラインがしっかりセットした守備は、大分攻撃陣の侵入を許さない。前線の選手もプレスバックで挟み込む意識が高く、ダブルボランチは当たりを恐れず対人に強い。攻撃では縦に急ぎ過ぎない、のらりくらりとポゼッション。大分はお得意のハイプレスでかっさらおうと目論むも、積極的に引いて受けるFW44中坂が勘所で回避所となり狙いを定められずに奪えない。

大分のプレスが空転して中盤が空いてきた9分、早々にスコアが動く。神戸の右サイド深くからのスローインを受けたMF13向井が相手DFをかわして、ゴールライン際をドリブル突破。えぐり切って出したクロスは相手に当たるも、ゴール前に飛び込んだMF8野田が拾って縦にワンプッシュ。混戦の中をスルーパス気味に転がったボールを再びMF13向井が受け、右足で落ち着いてゴールに流し込んだ。神戸が先制。

立ち上がりの空気の中で、大分にとっては苦しい失点。神戸はスカウティングが奏功したのだろうか、大分の繰り出す連続プレスを落ち着いたパスワークでかわし、着実に前線にボールを運ぶシステムが効いている。言ってしまえば最終ラインと中盤がパス交換を繰り返すだけで危険なエリアを使えていたというわけではないが、つなぐチームとの対戦が少ない大分にとっては不慣れなパターン。普段と違った流れに焦ってしまったか。

この後も神戸ペースは続く。やはりFW44中坂がいやらしい動き。積極的に中盤の底まで下がって受けるが、大分のFW13岡とMF26酒井の間にしつこく入ってくるため、マークの担当者があいまいなまま。うまく基点になって右に左に面白いほどパスが通る。もっとも大分もサイドの守備はお手の物。運動量が自慢の両サイドハーフMF10宮地とMF8浅原がしっかりサイドバックと良い距離感を保ち、相手のボールホルダーがサイドで孤立した状況を作れていた。

そして中盤の底でMF44中坂が空くということは、大分のトップ下MF26酒井も空く。サイドで奪った際のカウンターの起点として飛び出し、スピードこそないがしっかり収めることで単発の攻撃が可能になる。大分の飛び出しに対して、神戸は人に強く当たる意識が高い。脅威にもなっていたが、身体を入れることに失敗したMF26山本とMF10金田に立て続けに警告が出された場面もあった。

飲水タイム明け、大分は前線からのプレスをいったん諦める。最前線のFW13岡が周りをよく見て相手の中盤をケアしつつ、神戸の縦に急がないビルドアップを中盤で寸断する狙いだろう。最終ラインのDF27吉平駿も声を掛け合ってハイラインを崩さず、コンパクトな布陣を組織する。このような対応が平然とできるのが今年の大分の良いところ。リーグ最少失点のバランス感覚は伊達じゃない。これで神戸の攻撃はだんだん窮屈なものになっていった。

27分、大分の得意な形がこの試合で初めて見られる。横パス中心となっていた相手の縦パスを奪ったボランチから、1.5列目に下りてきたFW13岡に縦パスが入り、落としはDF27吉平駿へ。すぐさま右サイドを駆け上がるDF14宮原の動きを見て、得意の左足ストレートボールで数人飛ばしのロングパス。惜しくも濡れたピッチにボールが伸びて通らなかったが、こういったダイナミズムが出てくるといつものペースだ。このあたりで徐々に陣地も押し上げることができるようになってきた。

それにしても神戸の対人は強い。的確にボールを奪えるというわけではないが、MF8野田を筆頭に全員がしっかり身体を相手に当てることができる。ファウルになる場面も多かったが、接近→展開の流れでダイナミックにゴールへ向かう大分にとって、展開時の1対1で倒されるとペースが狂う。とくにペースが狂ったのかFW13岡は37分、倒されてピッチから出た後に無許可入で警告をもらう(初めて見た……)。

45分、大分はDF27吉平駿からDF14宮原の遠距離ホットラインがこの試合はじめて開通。縦パスを受けたMF10宮地が突破してクロスまで持ち込んだ。0-1のビハインドで前半は終わったが、着実にゴールは近付いている。悪くない形で小休止に入ることができた。

 後半の入りからは大分ペース。神戸の守備に前半ほどの勢いがなくなり、攻めの選択が増えてきた。とくにDF14宮原が素晴らしい。右サイドで起点となり、外を突破してよし、内に切り込んでよし、ボランチとの連携もよし、といった形でいったんボールを預ければガンガン押し上げてくれる。苦しんでいたクロスもだんだんうまくなってきた!

 そんな良いプレーは波及する。相手を押し上げることができるようになると、前線も高い位置を取れる。高い位置を取れるようになると、五分五分の縦のボールが相手の脅威になる。FW13岡の強みはFW9吉平翼にはない上背とスピード。優秀なロングキックを持つセンターバックを備えた大分にとって、精度に不安はあれどこの武器を使わない手はない。そんな形で相手のライン裏を伺う姿勢も出てきたことで、中盤も落ち着いてボールを持てるようになり、51分と52分にはMF7鷺原とMF8浅原が立て続けにミドルシュート。いよいよ大分が主導権を手繰り寄せてきた。

58分にはMF26酒井を下げて、サイドの槍であるMF11大串収亮を右に投入。MF10宮地が左サイド、MF8浅原がトップ下に入った。こうしてスピードアップした大分は59分にMF10宮地、67分には押し上げた状態でオーバーラップしてきたDF3戸高が左斜めからミドルシュートと何度も神戸ゴールを脅かす。神戸も61分にFW44中坂がカウンターから突破、MF7安井と崩して最後はMF13向井がシュートを放ったが、ゴールマウス上に外れた。

飲水タイム明けの72分、ついに大分が追いつく。右サイドを突破してクロスを出したMF11大串が相手のディフレクションにも反応し、ゴールラインを切りそうになるくらいにえぐってゴール前にマイナス方向のクロス。相手DFに当たったが左サイドから突っ込んできたMF10宮地が相手GKの動きを見つつ、DFの股下を左足で冷静に撃ち抜いた。キャプテンにとって2か月ぶりの一撃は、首位の座を大きく引き寄せる貴重な同点ゴール。オーバートレーニング気味で体調不良の時期もあり、ここまでとても長かっただろうが、それだけに気持ちの入ったナイスキックでした。さすが。

まだまだ大分は止まらない。74分にFW13岡→FW22小野原洸を投入。73分にMF28山本→MF18佐々木大樹を入れた神戸が前後分断になったため、FW8浅原を最前線に置いて、MF7鷺原を一列上げた[4-1-4-1]に近い布陣となる。意識的な変更かどうかは分からないが、神戸はロングキックを中心に攻めてきていたため、広がりにくくシンプルなやり方が求められていた。これもナイスアイデア

そして76分。試合を決めたのは、慣れない中央起用となったMF7鷺原だった。中盤で上手にボールを奪うと、そのままの勢いで前線に一直線にドリブル。サイドに開いていく味方の動きを視線で利用しながら、相手DF陣の間をぬってペナルティエリア付近に到達。最後のワンタッチで右に持ちだしてGKを動かし、そのまま抑えてファーサイドネットにグラウンダーでズドンと決めた。時間が止まったような雰囲気でプレッシャーの掛かる場面だったが、ブレない姿勢の良さが生きた見事なゴラッソ。これで勝ち越し。首位が見えてきた。

2点目を狙ったMF7鷺原は81分にも強烈なミドル。GK21鶴田に阻まれたが完全に乗ってきた。しかし直後の82分にMF20野上拓哉と交代でベンチへ。それでも文句なしのMOMでしょう。ゴールだけでなく試合を通して見ても、ボランチで出場していた九州クラブユース決勝・福岡U-18戦からはかなりの成長が見られた。ボールも奪えていたし、センタープレイヤーとしての才能も示したといえる。もっとも試合中の余裕を見ていると、まだまだポテンシャルの半分くらいしか出ていない。姿勢の良さから繰り出される安定したボールタッチと、ブレないキックは異質の武器。もっと動き直しの回数を増やして、ゴール前の入り方を身に付ければミュラーのようなオールラウンドな選手になれる。進学先でもう一皮むけてほしい逸材。

神戸は失点直後、FW44中坂に代えてFW9野原健太を投入。同点を狙って攻めに転じるが、焦りもあってオープンな配置になってしまいコレクティブな攻撃は難しい。サイドの裏を中心にボールを蹴り込み続けたが、大分のDF14宮原とDF4中畑らに競り勝つことができず、危険なエリアには到達できなかった。

試合はそのまま終了。大分が逆転勝利で貴重な勝ち点3を得て、ついにプレミアリーグ西地区の首位に立った。

 

グループリーグ敗退に終わったクラブユース選手権の悔しさを経て、リーグ再開後は無傷の3連勝。必ずしも簡単な試合ばかりではなく、2度の逆転勝利などしぶとさで試合をモノにしてきた。喜ばしいことだが代表招集で欠ける選手も多く、今後もアウェイ2連戦など苦しい戦いが続いていくだろう。試合中に誰かが言っていた「翼や智輝のために」じゃないけど、少しでも幸せな形で走っていければいいと思う。見るたびに伸びているこのチーム、すごく面白いです。

 

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