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たぶんサッカーの話が多いです。

日本クラブユース選手権U-18 決勝 横浜F・マリノス×大宮アルディージャ(15.08.01)

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気温30度を超える猛暑の中、11日という短期間で行われたクラブユース選手権もいよいよ最終日。「夏の王者」を決めるファイナルです。

横浜F・マリノス vs 大宮アルディージャ

メンバー

横浜F・マリノス
GK 16 上田朝都(3年)
DF 13 板倉洸(2年)
DF 19 坂本寛之(2年)
DF 24 常本佳吾(2年)
DF 26 平澤拓巳(2年)
MF 5 小松駿太(3年)
MF 6 佐多秀哉(2年)
MF 7 遠藤渓太(3年)
MF 12 阿部隼人(2年)
FW 9 渡辺力樹(2年)
FW 11 中杉雄貴(3年)
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GK 21 千田奎斗(2年)
DF 2 坂内祐太(2年)
DF 22 有馬弦希(2年)
MF 8 西浦英伸(3年)
MF 25 川原田湧(2年)
MF 27 根本圭輔(2年)
FW 10 和田昌士(3年)
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監督 松橋力蔵

 

大宮アルディージャ
GK 1 加藤有輝(3年)
DF 2 古谷優気(3年)
DF 3 朝妻佑斗(3年)
DF 16 北西真之(2年)
DF 19 野崎玲央(3年)
MF 4 山田陸(2年)
MF 7 松崎快(3年)
MF 10 黒川淳史(3年)
MF 14 長谷川元希(2年)
FW 8 藤沼拓夢(3年)
FW 11 川田拳登(3年)
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GK 20 加治屋歩夢(2年)
DF 5 土田直輝(2年)
DF 12 立石爽志(3年)
MF 6 高柳拓弥(3年)
MF 15 鈴木大貴(3年)
FW 9 小柏剛(2年)
FW 24 奥抜侃志(1年)
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監督 伊藤彰


フォーメーション
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試合

11日間で7試合をこなす過密日程のうえ、決勝戦という重圧から手堅い展開になると思われたが、いい意味で期待は裏切られる形となった。大宮の最終ラインがいつものようにボールを回すと、横浜FMの2トップはしっかりスライド。1列前にボールが入ればすぐさま小走りで詰めていき、主導権を握る守備への意識は高そうだ。前から行く2トップの守備に中盤が付いていけず、いくつか危険なエリアに斜めのパスを通される場面もあったが大事には至らず。ホーム三ツ沢で「相手の思いどおりにはさせない」というプライドが十分に見て取れた。

そんな展開どおり、スコアも序盤から動いていく。7分、大宮のパス回しを有機的に動く[4-4]ラインで奪った横浜FMは、ボールを前線に預けた勢いでMF7遠藤が左サイドを突破。相手DFに何度もボールと身体の間に入られながらもテクニカルなボールタッチと足運びで抜け出し、ゴール前に左足でクロスを送る。そこに逆サイドから飛び込んだのはMF12阿部。相手DFを振り切って利き足とは逆の右足で押し込み、横浜FMが先制に成功した。

ところが大宮も負けてはいない。先制した横浜FMの守備陣が「行くか、引くか」と迷っているスキを突いて、10分に同点に追いつく。機を見て引いてくるFW11川田が中盤で受けて前を向き、前に行けなくなったことから横に延びた相手DFの間にスルーパス。左サイドからダイアゴナルランでゴール前に抜け出したFW8藤沼が落ち着いて決めた。これでスコアは1-1。前半早々にして打ち合いの様相を呈してきた。

18分にはスルーパスから左サイドを抜け出した横浜FMのFW11中杉が大宮DFに倒される。獲得したFKこそうまくいかなかったが、すぐに流れを取り戻そうという圧力は大きい。FW11中杉はワントップ気味に配置する場合も多い小兵センターフォワードだが、常にマークを外す意識を持っており、ボールを持っていなくても相手の守備陣と駆け引きのできる良いFW。身体も強く競り合いへの意識も高いので、激しい展開のゲームではとても役に立つ。

22分、そんな勢いのままに横浜FMが均衡を破る。相手の縦パスを狙って狩ったDF26平澤がすぐさまFW9渡辺に縦パス。ターンする間もなく、ノールックで裏に抜けたFW11中杉にスルーパスを出す。FW11中杉はしっかりとハイスピードで相手DFを振り切りながら、GKとの1対1で動きを見つつ落ち着いて決めた。ちなみに17分と22分、FW11中杉に振り切られたのはいずれも同じ選手。まだ2年生のDF。駆け引きの名手との対峙を経て、一層の活躍に期待したい。

飲水タイムを過ぎても試合は横浜FMペース。ボランチの2人が中央を締めて大宮のパスワークを完全に遮断している効果が大きい。2人は縦パスへの意識も強いため、カウンターの恐怖も伴い、大宮は人数を掛けた攻撃ができなくなった。その象徴的なシーンは40分にあった。FW9渡辺が中央でタメを作って後ろのMF5小松に戻し、左を突破したMF7松崎にスルーパス。シュートは相手GKに阻まれたが、少ない手数での効率的な攻撃が見事に決まった。

前半は2-1で終了。横浜FMは猛暑の中でも運動量を増しており、大宮のやりたいサッカーを打ち消そうとする作戦が奏功した。大宮にとっては強みを生かせず、個性を逆手に取られる形となった。

後半の入りも横浜FMが優勢。51分、大宮DF16北西のパスをMF7遠藤が奪い、縦に抜けたFW9渡辺にスルーパス。右足で放ったシュートはしっかり相手GKを外して決まり、横浜FMが立ち上がりの追加点奪取に成功した。直後の53分にも、FW9渡辺がショートカウンターから決定機。MF7遠藤のロングボールを前線でFW11中杉が胸トラップし、落ちてきたボールを相手DFに倒されながらもFW9渡辺にパス。ファーサイドを狙った内巻きシュートはGKに左手一本で止められたが、ダメ押しの追加点は時間の問題と思われた。

ところが56分、大宮にもチャンスが転がり込む。相手の圧力から空きスペースとなった右サイド中盤でMF7松崎が受け、真横にいたMF10黒川にパス。リターンを受けたMF7松崎は得意の左足でのシュートを選択する。これは相手GKに阻まれたがCKを獲得。ここで蹴るのは右利きのMF14長谷川。インスイングの鋭いボールをニアサイドに配給すると、相手DFの間をぬってDF3朝妻がしっかりと叩きつける豪快ヘッド。難しいバウンドにGK16上田も反応できず、苦しい展開の中で大宮が1点を返した。

こうなると勢いが出てくるのがこの年代。直後の57分、ハーフライン付近の右サイドでボールを持ったMF7松崎が左足でロングボールを蹴り込むと、左サイドから長い距離を走り込んだのはFW8藤沼。ゴールに向かっていくボールの落下点に上手に入り、相手DFの猛追を背中で流しながら利き足の右足をびゅっと投げ出した。どんぴしゃで合ったボールはふわりと浮かび、飛び出してきた相手GKの上を軽々と通過。高いバウンドでそのままゴールに転がり込んでいった。思わず息を呑むようなビューティフルゴール。得点の勢いままに身体が動いたスピードスターの一撃で、大宮が同点に追いついた。

一方の横浜FMはこのまま流れを渡すまいと、失点直後にベンチが動く。FW9渡辺に代えて、チームキャプテンでありエースのFW10和田昌士を投入。短い時間で連取される形で陥ってしまった振り出しの状況だが、「負傷明けの大黒柱が決勝の試合を決める」という物語の舞台が整った。64分にもDF26平澤に代えてDF2坂内祐太。ドリブルのあるMF12阿部が左SBに入り、推進力のあるDF2坂内が右サイドハーフに入るという攻撃的布陣で勝ち越しを狙う。

大宮は同点ゴールがある種の成功体験になったのか、前線の動きが一気に活性化する。MF10黒川やMF7松崎がしきりに下がってボールを受けるようになり、他の選手が裏にフリーランするというシステマチックな有機的連携が見られるようになった。サイドバックも高い位置を保っている。すると相手の最終ラインは否が応でも前後を意識する必要が出るため、ライン間への楔パスも通るのがセオリー。ハブ的な役割をこなすMF4山田からは縦へのボールが増え、得意の主導権を握った崩しを生かした得点のにおいが出てきた。

ここからは一進一退の攻防となる。横浜FMは72分、右サイドを抜けたDF2坂内からのクロスをMF7遠藤がヘッド。ボールはゴールマウスを越えていったが決定機だ。大宮は73分に動きの質が上がらないMF10黒川を諦め、裏抜けもできる偽9番として機能するFW9小柏を投入して縦への意識を強める。シャドーにはFW11川田が入った。
76分には大宮に決定機。引いて受けたFW8藤沼がオーバーラップしてきたDF3朝妻にパス。上がったクロスにMF7松崎が反応するも左足シュートは枠外に外れた。78分は横浜FM。左サイドを突破したFW11中杉がえぐりこんで左足クロス。ゴール前に2人の選手が走り込んでいたが、突っ込みすぎて反応できず。ボールは逆サイドに流れていった。

そして80分、ついに均衡が破られる。大宮の攻撃が失敗に終わった直後、自陣でボールを拾ったFW10和田が左サイドのMF7遠藤に大きく展開。そのままMF7遠藤がドリブルで突っかけて、相手をかわし切らないうちに左足でアーリークロスを蹴り込んだ。すると逆サイドから猛スピードで走ってきたのは途中出場のDF2坂内。巻いてきたボールに向かって絶妙のタイミングで飛び込むと、小さな身体から繰り出された力強いダイビングヘッドが真っ直ぐな軌道でゴールネットに突き刺さった。これで4-3。猛暑のハイスコアゲームを動かしたのは地元・横浜FMだった。

そして横浜FMはまだまだ止まらない。MF6佐多に代えて運動量のある2年生MF25川原田湧を投入した直後の83分、ついにエースが本領を発揮する。自陣深くからMF12阿部が左サイドに蹴り込むと、スプリントで抜け出したのはFW10和田。そのままドリブルで敵陣深くに進入し、鋭いカットインで相手をかわしてシュートと見せかけ、さらに鋭い切り返し。逆サイドにはクロスを待つ味方選手もいたが、時間が止まったかのような一瞬の間をおいてFW10和田が選択したのは左足でのシュート。グラウンダーで放たれたストレートボールは、ファーのサイドネットスミにしっかりと狙いすまされていた。これでスコアは5-3。準決勝からの登場となった時限のエースが「筋書きどおり」に試合を決めた。

苦しい展開となった大宮は疲労度の高いMF14長谷川に代えてMF6高柳拓弥を入れるも、攻め気になった選手たちに上手な連係は取れず。残り時間と4分のアディショナルタイムは無情に過ぎていき、5-3のまま試合は終了した。横浜FMは2年ぶり6回目の「夏の王者」。大宮にとっては3年前のU-15時代に届かなかった全国制覇に、またもあと一歩のところで及ばなかった。

MVPと得点王はMF7遠藤(横浜FM)。敢闘賞はMF7松崎(大宮)。いずれも相手のレベルを問わず、試合を決める働きのできる選手だった。

 

まとめ

今年の「夏の祭典」もこれでおしまい。応援していた大分U-18にとっては残念な結果となりましたが、個人的には2年ぶりに来ることができて楽しかったです。

近隣大会を含めた熱中症事案の多発もあって、この大会のあり方はこれから見直されることにもなるでしょう。一つだけ言えるのは、こんなに素晴らしく愛すべき夏祭りがこれからも続いていき、そのために必要となる安全性を守っていけるようになれば良いなと思います。

立っているのもつらいほどの苦しい環境の中で闘った選手たち、いつも以上に重い責任を背負って参加しただろうスタッフや保護者の方々、猛暑の中でじっとカメラやペンを握った報道関係の方々、そしてわざわざ全国トップクラスに暑い場所まで足を運んだ熱い心を持った物好きクラセンファン、すべてにお疲れさまでした。

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