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たぶんサッカーの話が多いです。

日本クラブユース選手権U-18 準決勝 ジェフユナイテッド千葉×大宮アルディージャ(15.07.30)

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準決勝の2試合目。さすがに18時キックオフになれば少しは涼しい。空が開けていて夕焼けが綺麗に見えるので、三ツ沢のナイトゲームはとても好き。

ジェフユナイテッド千葉 0-1 大宮アルディージャ

準々決勝では柏との千葉ダービーを制した千葉と、北の正統派・札幌を下した大宮との対戦。千葉は2戦連続の対バルサスタイルで慣れという効果はあるか。大宮は前線の破壊力を生かして相手を問わずに同じ戦い方のできるチーム。

いずれもフォーメーションは[4-3-3]。千葉は[4-4]ラインの中にアンカーが入って守る。ワントップが前プレスに行くので、基準点をしっかり持ってスライドしつつ、前後運動で中盤のスペースを埋める。大宮は役割をハッキリさせない[4-5]の守備。サイドに広く5人が並んでいるため、ハイラインでロードローラーのようにピッチ幅をカバーする。

千葉の守護神はGK1辻周吾。長身でハイボール処理がブレない好選手。最終ラインは左からDF6川村優太、DF3柳田健太郎、DF4岡野洵、DF2齋藤拓海(オレ!)。アンカーはMF8横山玄徳で、シャドーにMF11北原渓、MF7大塚一輝。ウイングは左がFW10氣田亮真、右がFW14中村駿太郎。ワントップにFW19伊藤大将。2年生は4人。カナリーニョ出身のFW10氣田以外は千葉U-15からの純粋培養。

大宮は準決勝・仙台戦と同じ選手が並ぶ。世代最高級のGK1加藤有輝の前に、左からDF3朝妻佑斗、DF19野崎玲央、DF16北西真之、DF2古谷優気の4バック。中盤は中央にMF4山田陸、前にMF14長谷川元希とMF10黒川淳史が並び、前線には左からFW8藤沼拓夢、FW11川田拳登、MF7松崎快をそろえる。2年生はいずれもセンターラインに3人。ベンチ入りも含めて全員が大宮ジュニアユース出身。クラブユース選手権U-15の準優勝世代。(決勝は吉平ツインズを擁して臨んだ大分U-15が惜敗したG大阪JYとの対戦)

試合の主導権を握るのはゆったりとパスを回す大宮。前線の3人を中心にハイプレスにかかる千葉は、ボールホルダーへのスプリントで前からハメようとするも、大宮の無理をしないビルドアップに手を焼き、よほど状況の良い場面でしか追わなくなっていく。それでもFW19伊藤とFW14中村はよく走れており、ポゼッションに自信のないチームなら焦りを感じるであろう程度には圧力があった。

大宮はボールを動かすことにはそれほど苦労はないが、千葉のしっかりスペースを埋める守備に阻まれ決定機は作れず。FW11川田は引いてくるタイミングが絶妙で技術もあるのでボールは受けられるのだが、一瞬で次の動きに移れるほどのフォローが他の選手にない。攻撃はこのパターンにとどまっており、フラットな状態で相手を崩すアイデアに課題があるようだ。

前半はスコアレス。何もない45分間に大宮の伊藤彰監督は激怒。選手を出迎えながらピッチ内に進入し、戻ってくるMF10黒川に凄まじい勢いで活を入れていた。これだけ書くと伊藤監督は血気盛んな人に思えてしまうが、試合中はミスをした選手に冗談で励ましを入れるなど、とてもコミュニカティブな印象を受けた。もっとも多く前を通るDF3朝妻とは普通に世間話をしているのではないかというくらい、試合中なのに笑顔あふれる対話が繰り広げられていた。

後半も変わらず大宮ペース。前半と比較して、千葉守備陣の間に「楔のパス」を打てるようなシーンが増えた。具体的には、最終ラインやアンカーからの斜めのボールが、対角のシャドーやウインガーが良い形で受けられるようになった。こうなると相手布陣は下がるしかない。前半にはなかったMF4山田のミドルシュートもあったし、サイド深くに進入したSBからのリターンパスがシャドーに入る場面も出てきた。

試合が動いたのはセットプレーから。63分、MF10黒川の右CKに千葉GK辻がパンチング、拾った選手からのリターンを受けたMF10黒川が縦にえぐったMF7松崎にパス。受けたMF7松崎はカットインからのシュートを狙うかと見せかけ、ダブルタッチでライン際を抜いて角度のない場所から左足を振り抜いた。これがしっかりゴールを射抜き、貴重な先制点をゲット。

やはり大宮の強みはユニット間の関係性。フラットな状態でのチームとしての攻撃はそれほど完成度は高くないが、数人で見せる崩しは一級品。相手との1対1を自信満々で選択でき、危険なスペースを果敢に突くことができる。ビルドアップの正確さが目を引くためポゼッションのチームという印象だが、ひょっとしたらカウンター時に最大値が出せるチームなのかもしれない。

追いすがる千葉は66分、追い疲れのFW19伊藤に代えてFW9安藤一哉を投入。U-18日本代表のDF4岡野も下げ、同じ長身DF18長谷川雄介も入れた。防戦一方というわけではなく攻め込む場面はあるのだが、中央一辺倒になることが多く中盤より前に進むシーンは少ない。72分にはMF11北原に代えてDF13菊池俊吾を入れた。

大宮も78分に初めての交代。疲れの見えたMF10黒川を下げてMF6高柳拓弥、81分にはMF14長谷川に代えて2年生FW9小柏剛を投入した。シャドー2人が代わったせいか間延び気味になるシーンもあったが、伊藤監督もすかさず「山田ー!ホーム!」と愛犬を呼ぶようなアドバイスでアンカーMF4山田のポジションを修正。2年生ながら強靭なフィジカルを生かして、すべてのボールにアプローチしていた。千葉は80分にFW14中村→FW15中上貴博の交代。大宮は86分にMF7松崎を下げてDF12立石爽志。
千葉は何とか追いつこうと前線に選手をかけて攻め込む。アディショナルタイムにはDF3柳田に代えて長身2年生FW20小澤雄太も入れ、パワープレーでの制空権の獲得にも狙いを見せる。ところが細かい局面に選手を集めるため渋滞気味。ある程度の横幅を取って斜めのパスを入れないと、大宮のコンパクトな守備網相手には苦しい。全体的に終盤の攻撃はあまりうまくいかず、逆にカウンターを食らって大宮FW9小柏に抜け出されるシーンのほうが決定的だった。

最終盤には途中出場のMF15中上が2枚目のイエローカードで退場するなど展開をひっくり返すことはできず、そのまま試合は終了。大宮が初めての決勝に歩を進めた。

 

千葉は昨年の大分U-18を連想するような良いチームだった。選手たちの理想としてはポゼッションをしたいのだろうが、強力な相手には前線からのプレスもしっかり遂行。理想と現実を常に意識しながらチーム作りをする必要性に迫られ、そんな苦労を乗り越えてきたんだろう。

大宮は相手こそ違えど、3年前で敗れた帯広決勝のリベンジマッチ。伝統のある横浜FMにも実力では上回っているので、大舞台での経験不足を自信でカバーしたい。

決勝は1日午後3時キックオフ。11日間で7試合をこなす冗談みたいな日程のラストマッチだが、なんとか好ゲームを見たい思いでいっぱいです。

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