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たぶんサッカーの話が多いです。

日本クラブユース選手権 準々決勝 名古屋グランパス×ベガルタ仙台(15.07.28)

 

2年ぶりの群馬。いろいろなチームが一度に見られて好きな大会なので、ここに来ることができてとてもうれしい。大分トリニータが残っていないのは寂しい限りだが、せめて決勝まで楽しんで帰ろうと思う。

急な雨に傘を買っていたらバスに乗り遅れたので、急きょ予定を変更して敷島公園に行くことにした。前橋総合で会う予定だった方には申し訳ありません。

 

名古屋グランパス 1-2 ベガルタ仙台

スタートは両チームともに[4-4-2]。戦術は両極端で、ボールを動かしながら相手のスキを突きたい名古屋と、奪ってからの鋭いカウンターで相手守備陣の裏側を陥れたい仙台という構図。

名古屋はGK21加藤大智、最終ラインにDF6吹ヶ徳喜、DF26青山夕祐、DF6加藤直生、DF17高橋誠二郎、2列目にFW14梶原幹太、MF8池庭諒耶、MF4川﨑健太郎、MF7柴田駿、最前線がFW10森晃太、FW9北野晴矢という並び(いずれも左から)。1年生が1人、2年生が1人、その他は3年。8人が4~6月生まれで、10人が上半期生まれという凄まじい陣容。

仙台はGK16田中勘太、最終ラインにDF6相原旭、DF23上田健斗、DF3郷家章人、DF30平澤健介、中盤にMF25村越健太、MF8縄靖也、MF4織田遥真、FW11木本晃次郎、最前線にFW18本吉佑多、FW9吉田伊吹という並び(いずれも左から)。2年生が2人。U-18日本代表経験のあるMF10佐々木匠は出場停止で、スタンドでメガホンを握っていた。

 

序盤に主導権を握ったのは名古屋。前から追って来ない仙台に対して中盤の選手が高い位置まで押し込み、空いたサイドバック裏への斜めスルーパスからクロスが上がる場面が目立つ。仙台の守備陣はコンパクトな3ラインを保つものの、スライド時にサイドハーフが遅れることが多く、素直なパス回しにも対応しきれず後手を踏む形となった。

ところが名古屋がチャンスを決めきれずにいると、中盤のパスミスを奪ってショートカウンターに至る場面が増えてくる仙台。FW18本吉のシュートがポストに阻まれること2度、狙い通りとはいかないものの得点の可能性は見えてくる。名古屋は雨のピッチに苦しんでいるのか、ボランチが慌てて横パスを出して奪われるシーンが目立つ。相手を見てパスを出すというよりも、難易度の高いコースに固執しているようだ。

そのような流れで、スコアレスのまま前半は終了。準々決勝レベルとは言い難い淡白な展開となった。雨が上がって陽が出てきたので後半は消耗戦が予想される。ハーフタイムでには仙台が動き、FW11木本に代えてFW17齋藤耀之介を投入した。

ハーフタイムに気持ちを入れ直したのか、仙台は後半早々からプレスラインを上げて臨んだ。名古屋は「望むところだ」とばかりにハイラインをキープし、角度を付けたパスワークでいなして対峙。こうなると試合は面白くなる。

試合が動いたのは56分。ハーフライン付近でボールを受けた仙台FW18本吉が相手DFを並走する形に持ち込み、ボールを前方にプッシュして自慢の猛ダッシュ。“一馬身”分ほど遅れていたが抜群のスピードでボールを保持し、ゴール前に左足の低いクロスを配給する。そこに飛び込んで行ったFW9吉田がマーカーより先にボールにたどり着き、ボレーで押し込んだ。主導権という観点では劣勢に思われた仙台、貴重な先制点となった。

このまま初めての三ツ沢行きを決めたい仙台だったが、前からプレスに行くようになったぶん名古屋のパスワークに苦しむようになる。前半は全体的に押し込まれる形になったが、後半は間を通され間延びする場面も出てきた。攻められ続けた疲れもあったのか、64分には中盤でソリッドな仕事をしていたMF8縄が下がり、MF7錦織司が投入された。守勢に回っての1点リードは心もとなく、選手間の攻守の意識にもギャップが出てきていた。

再び試合が動いたのはその直後。広く空いた仙台のMFとDFの2ライン間で受けたFW10森が前を向くと、FW9北野が左から右奥に豪快なダイアゴナルラン。「ここしかない」というタイミングで出た絶妙なスルーパスにFW9北野が落ち着いてGKをかわしてシュートすると、仙台DF6相原が回り込んで間一髪のブロック。しかしここで笛が鳴ってPKの判定、主審はレッドカードを提示した。スライディングの際に腹部の前に置いた腕にボールが当たったとみなされたらしい。これはなかなか厳しい判定だ。66分、PKはFW9北野が右上にばっちり決めた。この日は動きが良くなかったが、しっかり1点ものの働きをするのがエースストライカーの仕事。

1人少なくなった仙台はFW18本吉をワントップに据える[4-4-1]に変更。前からのプレスをやめ、中盤が最終ラインに吸収されることも厭わない全員守備体制となった。ところが攻め手を変えない名古屋は中を固められた人海戦術を崩すことができず、ひたすらサイドに出してクロスを壁に向かって蹴り続けるような場面が続く。もちろん仙台も攻めに転じる余裕はなく、ボールを得てもクリア気味のロングボール中心でFW18本吉に「おまかせ」状態。それでもやるべきことがはっきりしたのか、お疲れモードは消えていた。

お互い暑さを意識してか用兵でリフレッシュも図る。名古屋がMF7柴田→MF18田中彰馬(72分)、FW9北野→MF19杉浦文哉(85分)、仙台がMF25村越→FW29阿部龍之介(76分)、DF30平澤→DF2小島雅也(81分)の交代カードを切った。攻める名古屋に守る仙台という構図が続く。

ところが延長戦も見えてきた87分、何事もないクリアボールから均衡が破られる。自陣に戻っていた仙台FW29阿部が前方にクリア気味のハイボールを配給すると、ハーフライン付近に攻め残っていたFW18本吉が名古屋DF26青山と競り合うふりを見せながら前方にターンする。バウンドを誤った相手を尻目に、本吉はボールを収めてゴールに向かってスプリント。ダッシュで追いついたものの体勢の悪い名古屋DF6加藤直を左右に揺らし、腰の回転で振り抜いたドリブルシュートでファーのサイドネットを射止めた。1人少ない仙台が貴重な勝ち越し点を奪取。仙台サポーターは大騒ぎ、次の試合のため来ていた中立サポーターは騒然となった。

仙台FW18本吉は小顔で四肢が長く、肩幅と臀部がしっかりと出張っているサッカー選手には珍しい体型。新潟の鈴木武蔵を想起する。184センチの高身長だがまだまだ成長期なのか、急な方向転換などの身体操作は拙いが、跳躍力や加速力は目を見張る。チームにおける攻撃の中心というよりは、システムの外部から「予想外」を引き起こすトリックスター的な印象。きっとチームメートの誰もが、彼がどこまでやれるか分からないんじゃないか。

その後も仙台は集中を乱さず、素材系FWの1点を生かして2-1で勝利。クラブ史上初の全国ベスト4を確定させた。「試合巧者」という表現とはまた違うかもしれないが、劣勢を絶妙なバランスで跳ね除け続けたメンタリティーがお見事でした。スタンドにいたMF10佐々木匠もピッチに降りて喜びを大爆発。こういうのは見ているほうがうれしかったりするよね。

個人的なMVPはもちろんFW18本吉佑多。さまざまな見どころはあったけど、結局は彼がすべて持って行ったといっても過言ではない。チャントのモデルは元仙台の中原貴之(福岡)。「解き放て」「野獣を野に放て」のメッセージがぴったりでした。三ツ沢でも印象に残るプレーを期待したい。

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